「食品ロス」年間472万トン! 事業者たちの削減への取り組み
農林水産省の最新のデータによりますと、2022年度に廃棄された「食品ロス」は日本国内で年間472万トンにも上ります。一般家庭・食品関連事業者それぞれが236万トン程度で、割合としてはほぼ半分ずつとなっています。これを国民1人当たりに換算すると「毎日、おにぎり1つ分」を廃棄していることになります。今回、事業系食品ロスの削減に取り組む現場を取材しました。 神奈川県相模原市にある食品リサイクル工場は、東京都内や神奈川県にある200カ所以上のコンビニエンスストアやファミリーレストランといった食品関連の事業所から毎日およそ40トンの廃棄食品を受け入れています。次々とミキサーに入っていく事業者から廃棄された「食品ロス」について、日本フードエコロジーセンターの高橋巧一社長は「これはピザの生地。このようなものは毎日たくさん入ってくる」「コンビニの弁当やおにぎりを作っている工場から作りかけのものや失敗したものも来る」「この辺りは全部パスタ。失敗してしまったものやゆで過ぎたもの」などと説明しました。 こちらの工場では廃棄食品を粉砕し液体の状態にして、家畜の餌として農家に提供しています。高橋社長は「食品ロス問題がかなり社会的にクローズアップされているので、全体的には1社当たりの廃棄量は減っているのではないか」としつつ「ただ、現実にはまだまだ焼却炉で燃やされてしまう食品廃棄物もたくさんある。どう解決していくのかというのも一つの課題」といいます。 課題の解決に向け、独自の取り組みを進めている企業もあります。大手コンビニチェーンのファミリーマートは11月、都内と神奈川県の一部の店舗で、消費期限が迫った商品に貼る値下げシールに『たすけてください』というメッセージと悲しい表情をしたキャラクターを掲載し、値下げ商品の購入率が上がるかどうか検証しました。ファミリーマート・サステナビリティ推進室の原田公雄マネジャーは「結果は検証中だが、おおむね良い評価をもらっている。これが成果につながると期待している」と語り「結果次第だが、結果がちゃんとついてくると分かれば実施する店舗の拡大も見据えて進めていきたい」と話しています。 また、飲食店の現場でも取り組みが進んでいます。“食べ残した料理の持ち帰りサービス”は、大手外食チェーンのガストがこれまで、客が要望した場合にのみ専用の容器を提供してきましたが、2023年度からはタブレット端末のメニューで注文できるようにしました。持ち帰り容器があることをメニューとして知らせることで、容器の利用数は前年に比べて2.3倍に増えたといいます。ガスト・中日本営業本部の阿部花央里マネジャーは「『子どもが食べ切れなかった場合など、とても便利に活用している』とうれしい声をもらっている。社会全体で食品ロスへの関心が高まっていると感じている」と語ります。 いまではグループ店舗のおよそ8割に当たる2400店で展開し、1日平均3500個ほどの容器が利用されているということです。 店舗の利用客からは「子どもだと気分によって食べないことがある。持ち帰り用の容器があると、家に帰ってから気分が変わって食べることもあるので活用したい」「いいことだと思う。店側では衛生的なこともあるとよく聞くが、冷蔵庫に入れておいて、その日のうちなら夜にでもおなかがすいた時に加熱して食べることができる」といった声も聞かれました。 少しずつの廃棄が大きな課題につながっている「食品ロス」問題は、解決に向けて少しずつの取り組みを積み重ねることが求められています。