清流に沿って走る岐阜の三セク・長良川鉄道 関・美濃・郡上八幡の沿線街歩きと旧名鉄車両との出会い
“鉄っちゃんアナ”としても親しまれる鉄道通のフリーアナウンサー・羽川英樹さんのラジトピコラム「羽川英樹の出発進行!」。今回、羽川アナが現地取材したのは、長良川鉄道の『美濃太田』~『郡上八幡』です。それでは、出発進行! 【動画】鉄アナが実況レポート! 長良川鉄道を行く ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 岐阜県を走る第三セクター・長良川鉄道は、かつて国鉄・越美南線だった『美濃太田』~『北濃』の約72kmを受け継ぎ、1986(昭和61)年に開業しました。 もともと国鉄・越美線は文字通り福井と美濃を結ぶ路線として計画され、北線は現在JR越美北線(愛称・九頭竜線)として越前花堂~九頭竜湖間の52.5kmを結び、南線は長良川鉄道が引き継ぎました。九頭竜湖~北濃間の24kmは過疎と急こう配のため、今もつながらないままとなっています。 長良川鉄道の起点、『美濃太田』は、岐阜からJRの高山本線の普通で35分ほどのところ。駅の所在地は美濃加茂市ですが、駅名は開業当時の町名・加茂郡太田町に由来します。ちなみに、かつて美濃国加茂郡太田村といわれたこの地、中山道51番目の宿場町「太田宿」は、今も歴史情緒あふれる町並みが残り、観光スポットとして親しまれています。 ここ『美濃太田』はJRとの共同使用駅。高山本線と多治見に向かう太多(たいた)線が乗り入れており、ちょうど高山に向かうHC85系の特急ひだも停車中でした。 駅の一番端にある長良川鉄道のホームに停まっていたのは、たった1両の気動車。派手なボディはさくらももこさん原作の地元を舞台にした「GJ8マン(ジー・ジェイ・エイトマン)」のラッピングでした。 乗車して約20分で『関』に到着。かつては名鉄美濃町線もこの駅まで伸びていました。長良川鉄道の本社もある『関』は、ドイツのゾーリンゲンやイギリスのシェフィールドと並んで世界三大刃物の産地としても有名。岐阜関刃物会館では2千点を超える包丁やハサミを安く手に入れることができますし、刃物の技術のすばらしさを伝える関鍛冶伝承館にもぜひ立ち寄りたいところです。 次の見どころは『美濃市』にありました。同駅から歩いて3分ほどのところにあるのは、「旧名鉄美濃駅」(旧名鉄美濃町線美濃駅)。大正12(1923)年に開業した駅舎がしっかり保存され、構内には数多くの鉄道資料が展示されています。 駅舎から外に出ると……おおっ! なつかしい車両たちが3両も勢ぞろい。カーブが曲がりやすいように設計された独特の細長い車体の「モ601」、丸窓電車として人気を集めた「モ512」、ノスタルジックなカラーリングの593系が出迎えてくれます。入館無料もうれしいですね。 野口五郎の故郷でもある美濃市には、豪商が富を誇示する「うだつ」(屋根に設置した防火壁)の街並がしっかり残り、美濃和紙のライトアップ(「美濃和紙あかりアート展」)も12月1日まで開催されています。 『湯の洞温泉口』を過ぎたころから長良川が見えてきます。ここからは川の流れが車窓の右に左にと変化しながら、いくつもの橋梁を渡っていきます。 そんな眺めを満喫してもらおうと2016(平成28)年に登場したのが、鮮やかなロイヤルレッドが目をひく観光列車「ながら」です。車両デザインは、デザイナーの水戸岡鋭治さんが担当。内装には岐阜の木材や郡上八幡ののれんなどが使われ、地元シェフが腕をふるった豪華ランチを楽しむこともできるんです。現在は金土日祝に『美濃太田』~『郡上八幡』間で運行されています。 始発『美濃太田』から約1時間15分で沿線きっての観光スポット『郡上八幡』に到着。昭和4(1929)年開設の国の登録有形文化財の駅舎に降り立ちます。木造の跨線橋にも歴史を感じますねえ。 まちなかを流れる長良川の支流・吉田川。そして標高353メートルの八幡山山頂にお城がそびえます。江戸時代の建物や用水路を残す古い風情ある街並みは秋の散策にぴったり。また、この街は食品サンプルの聖地でもあり、食品サンプル創作館「さんぷる工房」では製作体験もできるんです。ちなみに、この街で毎年夏に行われる「郡上おどり」は、なんと30夜以上連続開催と日本最長のお祭りとして有名です。 このあと、この列車は終点『北濃』まで、さらに45分ほど進んでいきますが、今回のリポートはここまで。 関・美濃・郡上八幡など、見どころいっぱいの街を長良川に沿って走り抜ける「ながてつ」。ただし昼間は運転間隔が2時間ほど空くときがありますので、ダイヤを確認の上でぜひ一度ご乗車ください。(羽川英樹)
ラジオ関西