<挑む・’23センバツ>仙台育英・東北・能代松陽 チーム紹介/上 仙台育英 日本一 重圧から自信に /宮城
◇過去と比較せず、挑戦者として 1月下旬。宮城県多賀城市の仙台育英高グラウンドでは、センバツ出場を決めた野球部員らが雪かきに精を出していた。左中間フェンスには「感動をありがとう」「宮城・仙台の誇りです」の横断幕。昨夏の甲子園で東北勢として悲願の初優勝を成し遂げ、仙台市の商店街から贈られた。主将の山田脩也(2年)は「応援してくれた皆さんの気持ちが伝わり、元気をもらえる」と笑顔を見せた。 日本一になったことがチームにもたらした果実は大きい。昨夏の決勝マウンドに立った高橋煌稀(2年)は、大舞台で場数を踏み「いつでも焦らず冷静に投げられるようになった」。新チームではエースナンバーを背負い、秋季東北地区大会優勝の立役者に。センバツに向けて「姿で投手陣を引っ張りたい」と意気軒高だ。昨夏、4番打者として活躍した斎藤陽(2年)も「甲子園で自信はついた。まだまだ良いバッティングができる」と闘志をむき出しにする。 昨夏はスタンドから応援した選手も「次は自分が」と機会をうかがう。昨冬から長引く故障に苦しみ、戦力として有望視されながらも出場を逃した斎藤敏哉(2年)は、親友でありライバルでもある斎藤陽の甲子園での活躍に、うれしさと悔しさが募った。その思いをバネに奮起し、秋からスタメン入り。「今度こそ舞台に立って、長打でチームに貢献する」と誓う。 ただ、新チームの船出は必ずしも順調ではなかった。昨夏の優勝後、しばらくは「プレッシャーと戦う日々だった」と山田。そんな当時の部員らを須江航監督は「弟気質」と評する。率先して動かず、指示待ちの姿勢が目立ったからだ。「野球以外の面も見られている」「周りから『今年のチームはダメだ』と言われないか」――。そんな悩みを抱える部員も多かったのだ。 見かねた3年生から「自分たちらしく頑張れば大丈夫」と声をかけられ、山田は徐々に肩の力が抜けた。秋季県大会決勝では東北に敗れたが、その後は「一人一人が主体性を持つこと」をテーマに掲げることでチームの雰囲気も変わったという。山田は「言葉でもプレーでもチームを引っ張り、最終的には日本一になりたい」と力を込め、センバツ制覇を見据える。 須江監督はこの1年のチームの成長を振り返り、「昨年は優勝を目指してはいても自信はなかった。でも夏を経た今は『自分たち次第でいかなることも達成できる』と思えるようになった」と手応えを語る。 同時に重視しているのは、過去との比較をしないことだという。「昨夏とは違う新チーム。『2回目の初優勝』という感覚を持って頂点を目指したい」。確かな自信を手にしながらも、そこに慢心はない。 センバツで大会史上40年ぶりの「夏春連覇」へ。“新生・仙台育英”が、再びチャレンジャーとして臨む。【平家勇大】 ◇ 第95回記念選抜高校野球大会に出場する仙台育英(宮城)、東北(同)、能代松陽(秋田)。東北を代表して甲子園に挑む3チームを全3回で紹介する。