「B’z」松本が語るアーティストの矜持「トライやチャレンジは常に必要」
ロックバンド「B’z」のメンバーとして活躍し、ソロ活動でも11年に米音楽界最高の栄誉とされる「グラミー賞」を受賞するなど、日本を代表するギタリストとして世界中にファンを持つ松本孝弘。最近では、テレビ朝日の音楽番組「ミュージックステーション」のオープニングテーマ曲を24年ぶりに再レコーディングしたことでも話題になった。そんな松本にアーティストとしての矜持や同曲も収録されている4月6日にリリースの最新アルバム『enigma』の制作について聞いた――。 大胆な発想と緻密な探究。成熟しながらも常に斬新であり続けるその音楽への姿勢がここにきてさらに具現化された、松本孝弘のニュー・ソロアルバム。歌心にあふれた美しく表情豊かなメロディ・ライン、多彩かつ先鋭的なギター・プレイ、タフでしなやかなバンド・サウンド、そして、それらを最高に格好良く昇華させるアレンジメントで構築された楽曲たちには、心躍らされ、魂が揺さぶられる。
「自分はちゃんと成長しているのだろうか」
しかし、その完成までの道のりには、深い思案とさまざまな自問自答もあったようだ。 「普段の制作は、『B’z』のときも、ソロのときもあまりテーマやコンセプトを決めないで、できた曲から順々に録っていくというやり方なんですけど、今回は珍しく“制作に入るにあたって何かテーマを持って臨みたいな”という気持ちがあったんです。でも、そのテーマが何なのか、自分が何をテーマに創りたいのかが、なかなか見つからなくて。去年の『B’z』のツアー中にも色々と考えていたんですよね。それは、自分自身がひとりの音楽家として、ひとりの人間として、今まで通ってきた道のりみたいなものを振り返って、“自分はちゃんと成長しているのだろうか”というようなことだったり。で、そんなことを考えていたら、いつものように自然と曲が自分の中から生まれてきて、最終的にこの形になったんです。“本当に自分が成長しているのかどうか”という自問自答の答えはいまだに出ていないんですけど、アルバムが完成してみると1本スジが通っているのは自分自身でも感じています」 “成長した”ということを一つの結論とするのか、それともあくまで過程の中での確認事項として捉えるのか。おそらくは松本の場合は常に後者なのではないだろうか。 だからこそ、これだけキャリアと実績がありながらも答えが出ないのだろう。 続けて、松本はこう語る。 「今までの自分のたどってきた道のりを振り返ってみて、“良いことも悪いことも自分には必要だったんだな”、“だからこそ今の自分があるんだな”と改めて思って。それは経験してきたこと、自分の身の回りに起こったこと、そして出会ってきた人たちすべて、なんですけど。アルバムに『Roppongi Noise』という曲があるんですが、六本木という場所は僕のプロミュージシャンとしてのスタートの地点だったし、そこにあるスタジオで色んなレコードに参加させてもらったし、多くのミュージシャンの人たちとも出会ったので、そういったことや人々への思いが込められた楽曲になっています」