なぜ今、このタイミングで、劇場版アニメ「はいからさんが通る」なのか?
1970年代に原作漫画、テレビアニメで人気を博した「はいからさんが通る」が、初の劇場版アニメとして生まれ変わり、現在『前編 ~紅緒、花の17歳~』が公開されている。 時は大正時代。女学生の花村紅緒は、かなり恥ずかしい出会いをしてしまった伊集院忍少尉が、祖父母の時代から決められた許婚の相手だと知る。恋も結婚相手も自分で決めたい紅緒は、愛のない結婚に反発して騒動を起こすも、少しずつ少尉に惹かれていく。単なるラブストーリーではなく、男性優位の時代に、明るく凛々しくまっすぐに生きる女性の活躍を描いた物語だ。 キャラクターデザインやファッションなど、若い世代にも受け入れられるように一新し、早見沙織や宮野真守など人気の実力派声優を揃えたことで、話題を集めている。 とはいえ、無の状態から新しいものを作り出すより、過去の人気作品に手を加えたり、アレンジしたりするほうが低リスクで効率がいい。この「はいからさんが通る」も正直、そんな目論見から製作されたものではないかと思っていた。 アニメの「はいからさんが通る」を少年時代に観て育ったというワーナー ブラザース ジャパンの松田章男、日本アニメーションの井上孝史、両プロデューサーに、なぜ今になって「はいからさん」なのかを聞いた。
「はいからさん」がやりたくてやろう、から始まった
松田:企画は今から約3年前でした。以前テレビシリーズを作られていた日本アニメーションさんに原作の最終回までをしっかり描くという「はいからさん」をやりませんか、という企画を提案をしたんです。そうしたらじつは日本アニメーションさんもずっと悲願に思われていたということで、原作もとの講談社さんに相談したところから始まりました。 ーー1978年6月から79年までテレビ朝日系で放送されていたテレビシリーズは、当初52話完結を予定していたが、モスクワ五輪のためテレビ局の編成上の都合で10話分がカットされてしまった。原作では中盤時点のシベリア出兵に従軍した少尉が、記憶喪失になりロシア貴族として帰国したところで、強引な幕切れとなった。原作者の大和和紀さんは承諾したものの、納得はできていなかった。ファンも突然の結末に「なぜ」と感じた。そんなわだかまりが解消されないままの40年間だった。ーー 松田:そもそも僕たちと同世代の「はいからさん」大好きな人たちが集まるご縁と機会があって、そういうところから始まったんです。何か商売っ気の部分とか、ブームに乗っかって何かやろう、というきっかけで始めたものではなく、「はいからさん」がやりたくてやろう、という話から始まったんです。 井上:そう、集まってしまったのが運命だったんですよね。完結させたいよね、っていうところが発端だったんです。アニメではまだ「完結している」ものを誰も観ていないんですね。 松田:でもテレビアニメでやるという発想はなかった。テレビシリーズでもう一回なぞるというよりも、大きなスクリーンで観てほしい。40年という時を経て、映画としてやるというところにこだわりました。