なぜ今、このタイミングで、劇場版アニメ「はいからさんが通る」なのか?
井上:僕もあそこはいいシーンだって、絵コンテやってるときにも思っていたんですけど、出来上がったのを観たときに「ここ、いいな」というのは、紅緒が酔っぱらって暴れて少尉におんぶされて家に帰るシーン。絵コンテのときは気付かなかったんですけどね。音楽とお芝居と出来上がった映像をみたら、いいなと思った。 松田:うん、すごくそう思った。 井上:大和先生に出してもらったアイデアに、少尉の正面のほうにカメラが振られるあのシーンは、あとからこのカットを入れようと、古橋監督のほうで足してくれたところなんですよ、じつはね。 松田:少尉の笑顔が決まりましたよね。 井上:そこにオーケストラの音楽が盛り上がっていくところがね、いいですね。 松田:それから、前編の引きをどうやって作るのか。大和先生にアドバイスをいただきましたが、ここはもう監督が最も苦心した部分でした。
「はいからさん」は変わらない いつの時代にも楽しんでもらえる作品
前編は紅緒の前向きな姿で明るい未来を予想させつつ、後編へとつないでいる。 最後に当時の少年少女たちに、そして当時を知らない若い世代への見どころとメッセージを語ってもらった。 松田:新しい声優さんにもお願いしていますが、テレビシリーズに出ていた声優さんに敬意を込めて、また出ていただきたいところがありました。懐かしいなと思って聴いていただければ。もう一つ言えば、やはり懐かしい隠し味がスパイスとして入っています。演出的な部分ですが、昔観ていた人、読んでいた人たちが今の時代になっても、ぼくらは塗りなおすんじゃなくて、新しく伝えていくためのものとしてのオマージュがあります。これは観てのお楽しみですね。懐かしいと思いながらも、新しい目で観て頂けたらと思います。 井上:映画「はいからさんが通る」という作品を、「試しに観てもらいたい」と思います。作品に込めた僕らなりの思いや当時の子供だった僕らの愛情とかいろいろ入っているんです。当時、観ていた人たちには、もう一度観てもらいたいと思います。男性ファンもいっぱいいるんですよね。「とにかく映画観て」って思います。テーマは不変だし、大正時代の物語だけど、古くはない。でも懐かしさもあります。 はじめて観るという方は、観た方がいいよって。ほかにはないアニメ作品になっていると思います。やはり原作もすばらしいし、なかなかほかにない少女漫画。大正時代の雰囲気もわかるし不変のテーマというのを感じると思います。 松田:意外に難しく高尚になりやすい今のアニメや映画がありますが、ドラマチックなストーリーと魅力的なキャラクターがいて、この作品はストレートに楽しんでもらえる作品だと思います。 年齢も性別も関係なく、いろいろな方に楽しんでいただけると思います。できれば昭和のはいからさん、平成のはいからさんを親子で語り合ってもらえたらなと素敵だと思います。
アニメの作り方は変わっても「はいからさん」は変わらない。とてもエキサイティングな様子で熱く語るプロデューサーたちの言葉の端々には「はいからさん」愛があふれていた。期待の後編は「鋭意、製作中」とのこと。誰もが待ち焦がれる、アニメでの「はいからさん」のラストは『後編 ~花の東京大ロマン~』(2018年公開予定)にある。 (取材・文・撮影:小杉聡子)