青木さやか「お正月、名古屋の祖母宅に帰省中、映画館で地震が起きた。96歳の祖母は必死に窓を抑えていた」
青木さやかさんの連載「50歳、おんな、今日のところは『……』として」――。青木さんが、50歳の今だからこそ綴れるエッセイは、母との関係についてふれた「大嫌いだった母が遺した、手紙の中身」、初めてがんに罹患していたことを明かしたエッセイ「突然のがん告知。1人で受け止めた私が、入院前に片づけた6つのこと」が話題になりました。 今回は「帰省中の名古屋で地震を体験した人として」です。 【写真】映画の前に食べた皿うどん * * * * * * * ◆『パーフェクトデイズ』を観ながら 元日は愛知県尾張旭市の96歳一人暮らしの祖母宅にいた。前夜は『紅白歌合戦』を横目に観ながら弟夫婦と娘とみんなでカードゲームを楽しんで、年越しそばを食べて『ゆく年くる年』の鐘の音を聞いてすぐに寝た。 朝起きて、子どもの頃から馴染みの神社へお詣りへいき、クルマでみよし市にある映画館へ娘と向かった。 「何観るの?」 「『パーフェクトデイズ』です」 「なにそれ」 「トイレの話」 「なにそれ」 「色々なトイレが出てくる話らしい。ママそれが観たいので」 「マジで。ワンチャン違う映画みる」
◆チュロスを食べながら チケットは映画館についてから購入した。娘は「『あの丘できみにまた会えたら』を前に観たがもう一度観たいと言い時間を調べたが、いい時間にやっていなくて、パーフェクトデイズを2人で観ることにした。 お正月だからどこまでも太ったっていい!ということで、フードコートで大盛りの皿うどんをいただいたあと、大盛りのポップコーンとチュロスと大きなコーラを持って映画館に入った。 『パーフェクトデイズ』を観にきてる人たちは、わたしより歳上の方が多くて、娘は 「ワンチャン寝るかも」 と言いながらチュロスを食べた。 映画が始まり、しばらくして元日にこの映画観にきてよかった!パーフェクトデイズだわ!と思った。娘は動かなかったから寝ているようだ。
◆東京に残したネコが心配で 映画も中盤のところで「地震です地震です」という機械的な音が劇場のあちらこちらから鳴り始めて、あれ?映画の中の音かな、と思っていた横に揺れ始め、それはかなり大きくて、そしてなかなか収まらなかった。娘を起こし、「地震!」と伝えた。 狭い劇場だったが7割ほどお客さんがいて、誰かと来ている人は「こわい」「長いね」「震源地は石川だ」と話していた。「ネコは?」と、娘が東京にいる飼い猫のことを心配して聞いてきたので、すぐに東京の友人に「大丈夫?」と連絡した「八幡様に来ていて気づかなかったよ~」呑気な返信に安心した。 弟に連絡すると、「おばあちゃんちも見に行ったが平気でした」と返信がきた。 富山に親戚がいる。心配になりLINEしたが返信がなかった。 映画館の揺れはしばらくおさまらなくて、船酔いのような感覚だった。