地酒の地方創生に ユネスコ無形遺産勧告 被災の氷見・髙澤酒造場「喜ばしい」
能登半島地震で被災した氷見市唯一の酒蔵である髙澤酒造場(北大町)は5日、新酒の仕込み作業やこうじ作りなどを進めた。全壊した米蔵・酒貯蔵庫の再建工事が進む中、復興を後押しするように「伝統的酒造り」の無形文化遺産への登録勧告が発表され、髙澤龍一社長(48)は「非常に喜ばしい。多くの人に興味を持ってもらうことで地方創生につながる」と笑みをこぼした。 髙澤酒造場は1872(明治5)年創業で、地震で米蔵・酒貯蔵庫が全壊、大正時代の仕込み蔵には亀裂が入った。断水もあって本仕込みは例年より1カ月程度遅れ、3月に地震後初めて新酒を仕上げた。 酒蔵の再建には総工費5千万円掛かるが、資金の一部を夏にクラウドファンディングで募ったところ、約700万円集まった。髙澤社長は多くの人の支えにあらためて気付き「なぜここで酒を造るのかを考え、氷見の食文化に寄り添う酒を造り続けたいと思った」と振り返る。 文化遺産の登録勧告は前を向く力になる。地震の影響で生産量が落ち込む中、髙澤社長はコロナ禍でほとんど止めていた輸出にも来年注力する考えだ。 ●県内、酒造各社が歓迎 富山県内の他の酒造会社も今回の登録勧告を歓迎した。 日本酒「五箇山」を醸造する三笑楽酒造(南砺市上梨)の山﨑英博社長(47)は「日本酒の需要はまだまだ伸びる。日本の風土に育まれ、複雑な過程を経て作られた価値を再認識してもらう機会となる」と話した。食事との相性も良いとした上で「ワインやビールと並ぶ選択肢の一つとして、日本酒が多くの人の日常になってほしい」と思いを語った。