「もう飛行機は盗まないよ(笑)」パスポートが下りない元赤軍・85歳の映画監督が、今もドキュメント映画を撮り続ける理由
49年の逃亡の末、昨年1月に亡くなった「東アジア反日武装戦線」のメンバー、桐島聡を主人公にした映画『逃走』が3月に公開される。 【画像】「3年以内に死ぬ」と医者に言われるも、現在も元気な足立監督 同作の足立正生監督は、1960年代後半に若松孝二や大島渚らと共に多くの意欲的映画を製作したのち、1974年に重信房子率いる日本赤軍にレバノンで合流し、1997年に現地で逮捕。刑務所に拘留された後、日本に強制送還され、出所後は精力的に映画を撮り続けている。85歳の今もいまだ衰え知らずの足立監督のパワーの源泉はどこからやってくるのだろうか?
6年前に「3年以内に死ぬ」と言われるも…
足立正生(以下同) よろしく(モスコミュールを片手に登場)。ここ(ユーロスペースの事務所)はタバコ吸っていいよな? 取材だし。なに、外じゃないとダメ? ――煙草は1日に何本吸われるんですか? (指をVの字に) ――20本? 2箱。 ――身体はどこも悪くないんですか? 医者には6年前に、これ以上吸ったら死ぬって言われてます。病院に行ったら、70歳までのデータしかなくて、僕がもう80歳すぎてるから、「てめえ、そんなデータじゃ信用できない」って言ったら、「タバコをやめない限りは病院に来るな」って言われ返されて、出禁状態なんだよ(笑)。 でもそのときに「3年以内に死ぬ」って言われて、いまでも生きてるから大丈夫なんじゃないかな。 ――ここにきて、すごいスピードで映画を撮ってますよね。『REVOLUTION+1』は安倍晋三首相銃撃事件から3か月後に公開、今回の『逃走』も桐島聡が亡くなって1年も経たずに映画完成と。 僕は爪の先ほどの予算で、山上や桐島がどういう人間であったのかを描きたいだけだからすぐにできたね。 魚の干物で言うとその骨だけを描ければいいから、(予算は)少なくていいんですよ。それよりも、映画でしか表現できない人間性というものを、メディアでぐちゃぐちゃにされる前に早く自分の意見を出したい。 ――鮮度があるうちに制作から公開までする、ということですか。 この現代社会の中で向き合う必要のある題材・人物をできるだけ早く、映画という表現で出すこと、それをテーマにしてるからね。 『REVOLUTION+1』は脚本を10校ぐらい書いたけど、それでも早くやれた。『逃走』も、本当はもっと早くできたんだけど、いろいろタイミングがあってね、遅くなった。 ホントは新聞記事みたいに映画を出したいんですよ。別に奇をてらってるわけではなく、必死に時代と向き合っているだけなんです。 映画を作れば作るほど懐は貧しくなるけど、社会的な大事件が起きれば、なにか考えるわけじゃないですか? それは社会の問題だけじゃなく、人間の問題であり自分の問題なので。 昔は若松とか大島渚と連日のように飲み屋でワーワーガタガタやっていて、そういう中で彼らは彼らなりの、私は私なりに作品で提案していたわけです。 それは問題提起だけじゃなく、映画っていう表現でもっと主張をしたいんです。その行為で時代と向き合うということだけは今もやめられないね。