孤立集落や断水の発生時は…能登地震「教訓」生かす 関西広域連合が災害対応方針見直しへ
能登半島地震の被災地を支援している関西広域連合は、大規模広域災害が発生した際の対応方針を定めた「関西防災・減災プラン」を見直す。構成自治体へのアンケートなどで孤立集落の情報収集や輸送経路の確保といった課題が指摘されており、改善策を盛り込む。元日の地震発生から1日で11カ月。令和6年度中に改訂プランを取りまとめ、災害時の迅速な対応につなげる狙いだ。 能登半島地震では土砂崩れや路面崩壊により道路が寸断され、石川県内の中山間地域で孤立集落が最大24カ所発生した。通信が途絶し、安否確認もままならなかった。同県を中心に断水が長期化し、おおむね解消するまで5カ月を要した。 ■国の改定計画も反映 関西広域連合は、構成する2府6県4政令市に初めてアンケートを実施し課題を洗い出した。改訂プランにはこれらの課題と対応に加え、国が6月に改めた防災基本計画の内容を反映させる。 孤立集落対策として、通信電波や支援物資が届かない地域では、衛星通信やドローンを活用し、円滑な運用に向けて事業者との「協定拡大などに取り組む」とした。土砂崩れなどで通行止めとなった道路を早期に切り開くため「道路管理者等との連携体制の整備」に努めることも盛り込んだ。 長期の断水時に避難所の生活環境を維持するため、トイレカーやランドリーカーといった水を使える移動車などについて、構成自治体の間で「保有状況の情報共有を行う」とした。 避難生活が長期化すると、高齢者や障害者は要介護度が重くなるなどの二次被害が懸念される。こうした要配慮者を支援する災害派遣福祉チーム(DWAT)が全国から派遣されたが、受け入れ態勢が不十分との意見があり、改訂プランには情報共有や現地調整に際しての連携強化を記した。 ■「派遣」重なり非効率な面も 関西広域連合は被災側と派遣側の自治体をペアにする「対口(たいこう)支援」で、能登半島に延べ約10万人を派遣。しかし国の応援派遣制度と重なり、現場では国と広域連合、派遣元の自治体にそれぞれ報告する非効率な事務作業が生じた。応援職員の宿泊場所の不足も課題にあがり、それぞれ改善策を盛り込む。 関西広域連合広域防災局の担当者は「書式が異なる報告書を統一するなど関係各所と事前に調整し、現場の負担を減らしたい」と話す。
改訂プランは今月から来年1月まで意見公募(パブリックコメント)を行い、3月に広域連合議会の議決を経て最終決定する。担当者は「政府作業部会の検証報告書や各府県の独自検証の内容も反映し、災害に迅速かつ適切に対応できる態勢を整える」と話した。(藤谷茂樹)