ポケモン、たまごっち、シルバニア…いま「自分用」におもちゃを買う大人が急増、その「納得の理由」
ジャンルは多岐に渡る
高橋氏によると、キダルト需要を狙った商品のジャンルは多岐に渡るという。 「『仮面ライダー』シリーズの変身ベルトもそうですが、数万円するような『機動戦士ガンダム』シリーズのプラモデルもキダルト向けの商品と言えます。また、最近話題の『Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)』といったアプリゲームも、大人も遊ぶことを想定したキダルト向けのゲームに該当するでしょう。 一般的には、自分たちが子どもの頃に流行った玩具やゲームで遊ぶ大人をキダルトと呼ぶことも多いですが、玩具やゲームの種類による明確な定義はないようです。『シルバニアファミリー』で楽しむことを“シル活”と呼ぶこともあるように、自分で楽しむためにミニチュア商品を購入する大人もキダルトに該当するでしょうし、単に『カプセルトイ』を自分のために回す大人や、『∞(むげん)プチプチ』などのストレス解消グッズで遊ぶ大人もキダルトと呼べるでしょう」
拡大をつづけるワケ
では、なぜいまキダルト市場の拡大が広がっているのだろうか。 「キダルト市場の拡大は、さまざまな要因が絡み合った結果だと私はみていますが、その背景には“作り手側の事情”が大きく関係しているでしょう。私はバンダイ出身なのですが、バンダイに入社した2004年当時にはすでに、少子化の影響で子ども向けの玩具市場の縮小が課題として上がっていました。そのため玩具業界は、新たな顧客層の獲得として大人に目を向ける必要性があったんです」 20年前にはもうすでに、玩具業界はキダルト市場の開拓を目指していたわけだ。 「この動きは玩具業界に限らず、漫画やゲームなどのエンタメ業界全体で共通に見られます。例えば近年、『うる星やつら』や『らんま1/2』など、何十年も前のアニメ作品がリメイクされ再び注目を集めています。また、“Y2K”と呼ばれる2000年代に流行したファッションやカルチャーが再燃しているように、私たちが子どもの頃に流行した作品や商品を大人になって“懐かしい”と感じ、それらを再び愛でる“リバイバルブーム”の影響も大きな要因になっていると考えられます。 ほかにも要因は考えられます。たとえば近年はトレンドの移り変わりが非常に早いため、新しい商品を作っても数週間後には飽きられてしまうのではないかと、新規コンテンツの開発リスクを懸念するような傾向がみられます。そのため玩具・ゲーム業界では、トレンドに左右されにくいリバイバル商品に着目して、大人の客層を獲得する方向に舵を切ったのでしょう」 記事後編は【「小さい頃に遊んだおもちゃ」に再びハマる大人が増えている…その予想外の「功罪」があった】から。
A4studio(編集プロダクション)