「必ず100点を出さなきゃと思っていた」高橋みなみの“呪い”を解いた仲間の言葉
大事な話は「メールより電話」。電話だと“言葉の温度”を伝えやすい
――当時、総監督として意識していたことや心がけていたことはありますか? 高橋みなみ: 忙しさに加え、メンバーは多感な世代ということもあって、メンタルバランスや体調面が日々変化しています。だから、一人ひとりの様子や状態をよく見て「今日この子はこういう感じだな」とメモしたり、「今日この子は厳しそうだから、トークは別の子に振ろう」と考えたりするようにしていました。 メンバーと接するときに意識していたのは、それぞれにかける言葉を変えることです。例えば何かをするのに、一つの壁を乗り越えれば完璧にこなせる子もいれば、10の力を出して頑張らないとできない子、10の力で頑張ってもなかなか難しい子もいて。本当にそれぞれなので、なるべく一人ひとりにかける言葉は変えていました。例えば、歌番組などで楽屋を出るタイミングにしてもそれぞれスピード感が違うので、メンバーによって「行くよ」と声かけをする回数や言い方を変えていました。 直接メンバーに会って話せないときは、メールよりも電話で話すようにしていました。とはいえ、最初はメールで相談などのやりとりもしていました。メンバーはSNS世代なのでメールの方が得意だし、電話慣れしてないだろうな、というのは感じていて…。実際、メールだとすごい長文で流暢に語っていた子が、電話になると、たどたどしくなってしまったりしました。でも、言葉の温度感や伝えたい角度というのが電話のほうが伝わったし、メールでは伝わってこない相手の思いにも気付けたと感じています。温度感を文章で伝えるには、高度な技術が必要なんですよね。だから私は、大事な話ほどLINEやメールよりも電話をします。
「完璧にやらなきゃ」の呪いを解いてくれた仲間の言葉
――メンバーを引っ張っていく総監督という役割には、相当な苦労やプレッシャーがあったかと思います。 高橋みなみ: グループは仲が良くて喧嘩やいじめもなかったので、そこでの苦労は全くなかったです。ただ、メンバーそれぞれが個人で戦う“個人プレーヤー”な面があったので、ときにバラバラになってしまう難しさは感じていました。 メンバーによっては、アイドル活動の他の仕事も頑張っていたので、日によってはほぼ寝てない状態だったり、自分で自分のコントロールができない精神状態になってしまったりすることもあったんです。目標達成に向けてメンバーのテンションやモチベーションを一定まで高めることや、みんなで楽しくできるようにすることは心がけていたものの、難しいこともありました。 そして、総監督という立場としてずっと「自分がちゃんとしなきゃ、必ず100点を出さなきゃ」という思いがありました。多くのスタッフさんとコミュニケーションを取る役割を担っていたので、その思いが強かったんです。また、私は中学生のとき、仲の良かった友だちに1年近く無視されてしまった経験から、誰かを信用して頼ることができなくなっていて、余計にそう思い込んでいたのかもしれません。 そんな「誰にも頼らず、完璧にやらなきゃ」の呪いが解けたのは、メンバーの言葉がきっかけでした。あるとき、何でもかんでも全て自分でやろうとしてパンク状態になって、過労で倒れてしまったんです。そのときに、前田敦子ちゃんや峯岸みなみちゃん、同期の子たちが「自分たちはすぐ近くにいるから、頼ってほしい」と言ってくれて。「振り返ってくれれば、すぐ後ろにいるよ。たかみながずっと前を向いているから気づかないだけだよ」という言葉をもらいました。「中学のときとは違う。ここにいるみんなは仲間で、助けてくれる存在なんだ」と気づいて、「完璧にやらなきゃ」の呪いが解けた瞬間だったと思います。