「アイズ・オン・ユー」より

恋愛バラエティー番組の出演者の中に、もしもシリアルキラーが紛れ込んでいたら……？ Netflixオリジナル映画「アイズ・オン・ユー」は、そんなうそのような実話をベースにしたサスペンススリラーだ。2023年のトロント国際映画祭でプレミア上映され、10月18日に配信が始まった。 【写真】連続殺人鬼を演じたダニエル・ゾバットは、ドラマ「ステーション・イレブン」への出演や「ヴァチカンのエクソシスト」でラッセル・クロウとの共演で知られるコスタリカ出身の注目俳優。 主演と監督を兼任するのは、「ピッチ・パーフェクト」シリーズや「シンプル・フェイバー」、「マイレージ、マイライフ」などで知られる米国の人気俳優、アナ・ケンドリック。ジャンル映画の中に独自のスタイルとセンス、メッセージ性もバランス良く織り込んだ、申し分のない監督デビュー作になっている。

1970年代にアメリカで起きた連続殺人事件を実写化

1978年、ハリウッド。ケンドリックが演じるシェリル・ブラッドショー（彼女も実在する人物）は、女優を夢見てオーディションに挑んでいるがなかなか役が決まらない。家賃の支払いに頭を悩ませていると、エージェントから人気の恋愛バラエティー番組〝The Dating Game（デートゲーム）〟への出演を指示される。ついたてで隠された3人の男性とトークをした後に、デートする相手を1人選ぶというマッチング番組だ。その3人の中の1人が、連続殺人鬼のロドニー・アルカラだったのだ。 ロドニー・アルカラ（1943～2021）はアメリカ全土で強姦（ごうかん）と殺人を繰り返したシリアルキラーだ。7件の殺人で有罪・死刑判決を受けたが、実際の犠牲者の数は130人ともいわれている。カメラを持ち歩き、写真を撮らせてほしいと女性や少年に声をかけ、人けのない場所で襲いかかるのが、ロドニーのやり口だ。 もちろん番組のスタッフたちはそんなことは知らないが、我々はロドニーの正体を知っている。なぜなら既に、彼が2人の女性を殺害するシーンを見せられているからだ。1人目は77年のワイオミングで。2人目は時をさかのぼり、71年のニューヨークで。そして79年のカリフォルニア州サンガブリエルで、家出少女とおぼしき美少女に声をかけているシーンもあった。つまりロドニーはテレビ番組に出演した後も、逮捕されずに犯罪を続けていたのだ。