学生時代に借金600万円→完済も勤め先倒産 最低生活からはい上がった急成長43歳社長の壮絶人生
「鍛え上げたうちのスタッフはどんな業界でも通用する自信があります」
ようやく、新たな一歩を踏み出せたところで、約半年後にコロナ禍が直撃。いつもにぎわっていた浅草寺・雷門周辺から観光客が消えた。2000~3000万円の借金を抱えての会社設立。「どうやってスタッフを食べさせていこう」と思い悩んで、心療内科に通った。 活路を見いだしたのがSNSだった。毎日のライブ配信など積極的に俥夫たちが発信。総フォロワー数は約20万人となっており、知名度上昇に大きく貢献。コロナ禍明けの観光需要増、インバウンドの再到来などで、売上はコロナ前を超え、従業員数は100人を突破した。浅草で有名な観光サービスの1つとして急成長を遂げている。観光需要爆発で足りないぐらいの人手。SNSを通しての求人が増えており、採用面でも効果を発揮している。 「そのお客様にとって、人生最後の旅行かもしれない。うちのスタッフにはその心づもりで働いてもらっています。旅行でどんなにおいしいごはんを食べてどんなに素晴らしい旅館に泊まっても、接客をした担当者が悪い対応をすると、その旅すべてが台無しになってしまいます。だからこそ、接客が何より大事なんです。旅の時間というすてきな心の変化を楽しんでいただきたい。うちは最高のお客様特化型を実現させています」。これが“西尾流”だ。 そのために従業員教育・育成には徹底して取り組み、報酬制度は「頑張りを還元」の明快なシステムを採用している。数多くの賞金制度を設けており、外国人客への接客に欠かせない語学力を支援する研修などを整えている。人材を「人財」と捉えており、人事採用にも注力し、面接は1人90分~120分と長く時間を割き、人間性や理解度などをチェック。採用後もスタッフ1人1人と食事をして人生相談に乗ることもあり、「離職率は高いですが、スタッフが人間として成長できるよう努めています」。西尾社長は「スタッフにとって父親のような存在」であり続けている。 そして、「もはや人力車じゃなくてもいいんです。鍛え上げたうちのスタッフはどんな業界でも通用する自信があります。今後の経営施策はスタッフみんなとアイデアを出し合っています」。培った“最強”の接客ノウハウを生かし、他分野への挑戦への計画を練っているという。「結局は人なんだよなぁ」。人を大事にして、人のために働く――。大切なモットーを胸に刻み、これからも新たな可能性を切り開いていく。
吉原知也