【「ババンババンバンバンパイア」撮影現場ルポ】コメディセンス抜群の吉沢亮を主演に迎え、プロデューサー陣が感じる手応え
奥嶋ひろまさが「別冊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載中の大人気コミック「ババンババンバンバンパイア」が映画化される。 【フォトギャラリー】吉沢亮らが参加した撮影現場の様子 主人公は、450歳の美しきバンパイア・森蘭丸(吉沢亮)。蘭丸は“18歳童貞の血”という極上テイストを味わいたい一心で、立野李仁(板垣李光人)の家族が営む銭湯に10年前から住み込みで働き、彼の成長と純潔を見守っている。そんな李仁も15歳。クラスメイト・篠塚葵(原菜乃華)に恋をした。蘭丸は、あの手この手で李仁の童貞喪失を阻止しようと奔走するが、それが勘違いされ、恋を呼んでしまうラブコメディだ。 撮影が行われたのは、うだるような暑い夏の日。撮影現場の様子を、松竹の鴨井雄一プロデューサー、テレビ朝日の井上千尋プロデューサーのコメントともにお届けする。(取材・文/関口裕子) ロケ地は練馬にある「たつの湯」。李仁の実家で、蘭丸がバイトしている銭湯「こいの湯」という設定だ。このたつの湯は、原作者・奥嶋ひろまさ氏の馴染みの銭湯だという。高い煙突に瓦屋根、壁画は富士山という昔ながらの趣に、魅了されている銭湯ファンは多いのだそう。「原作のモデルになった銭湯であり、この魅力的な外観、そのうえ引きの画が撮れる銭湯なんて都内には他になく、迷うことなくたつの湯さんにロケ地の相談をさせていただきました」と鴨井プロデューサー。 この日、奥嶋氏は手ずからクーラーボックスを持って陣中見舞いに訪れ、撮影を見守った。撮影現場を訪問するのは、もう4回目だという。原作者がこんなにしげく足を運ぶ映画は珍しい。 井上プロデューサーは、「奥嶋先生とは、随時脚本をチェックいただき、キャッチボールしながら映画を作り上げました。後半になるに従って『映画は映画なので、監督のクリエイティブを優先してください』という言葉もいただき、信頼関係が築けた手応えを感じています」とのこと。 原作によると森蘭丸は、織田信長のお小姓を務めたアノ蘭丸のようだ。どうやら南蛮渡来の船でやって来た吸血鬼に襲われ、バンパイアになってしまったらしい。劇中には本能寺の変のシーンもあるとのこと。「結構、本格的な時代劇が撮れたと思います」「あの設定のスピンオフを作りたくなりました」とプロデューサー陣はいう。 現代の日本を舞台にしながら、時代劇的な要素もある作品。ひと口に“バンパイアもの”とは括れないように思うが、「バンパイア映画といったらコレという作品を、日本にも欲しいと思ったんです。飛んだり、コウモリのように天井から逆さ吊りになるなど、映画的に映える要素がたくさんあるこの原作なら、バンパイア映画の代名詞となる作品ができるのではないかと思った」と語る。 絵になる要素と笑いを誘う物語が揃えば、あとはそれを形にする俳優と監督だ。 監督は、吉沢とは「一度死んでみた」(2020)で既に組んでいる浜崎慎治。KDDIの「au三太郎」シリーズのCMを見て、「キャラが立った作品も違和感のない形で落とし込める人だと感じ、まず声を掛けさせていただいた」とプロデューサー陣はいう。 そしてキャラが立った一風変わったバンパイア・森蘭丸を演じるのは吉沢亮。恋人の成長を見守るように、李仁が18歳になるのを待つバンパイア・蘭丸にとって、バックハグ、壁ドン、羽交い絞めは、いわゆる恋愛もののそれとは意味が異なる。だが、見た目はラブシーン。勘違いが生む嫉妬を、吉沢は絶妙な間と表情で笑いへと昇華させる。蘭丸に恋心を抱く葵を演じた原菜乃華も、吉沢の演技に笑いが止まらなかったというほどだ。「吉沢さんは、ギャグやお笑いも全力でやられるし、美しさには説得力がある。どれだけやっても下品にならないチャーミングさも兼ね備えている人なのでぜひ蘭丸を演じてほしかった」とプロデューサー陣。 今年は大ヒットシリーズの最終章「キングダム 大将軍の帰還」(2024)に、海外の映画祭で高い評価を受ける「ぼくが生きてる、ふたつの世界」(2024)と、幅広いキャラクターを丁寧かつ大胆に演じた。「本当に器用な方。引き受けていただいて本当に良かったと日々感じています」。 そんな蘭丸に熱いまなざしを注がれる李仁を演じるのは板垣李光人。名前が同じ“りひと”なのは、原作者が板垣李光人をモデルに創り上げたキャラクターだから。「奥嶋先生が板垣さんをモデルにしている以上、正直キャスティングは一択でした。観客が李仁をかわいいと思わないと成立しない。板垣さんが肝の作品でもあるので断られたらどうしようと(笑)。そこがバシッとはまったところで、この作品、見えたなと思いました」。 板垣と吉沢は、NHK大河ドラマ『青天を衝け』(2021)で、パリ万博に幕府代表として渡欧した徳川昭武と、それに随行する渋沢栄一として共演済み。「クランクインの前には、食事に行かれたそうです」。作品に対して120%の準備で臨むタイプの2人。それはどんな作品にも共通することなのだろう。「青天を衝け」とは全く異なるテイストながら、彼らは絶妙な間で浜崎監督から引き出した笑いを、撮影現場に響かせていた。 「ババンババンバンバンパイア」は、2025年2月14日から全国公開。