新旧ロードスターを乗り比べ! 大規模マイチェンでどう変わった?
唯一無二の存在感
ここでマイナーチェンジ後の新型、SレザーパッケージVセレクションに乗り移る。タンカラーのレザーシートや、ダッシュボード下やドア内張りに同色を配したインテリアは、ブラックで統一された990Sや現行Sと比べるとラグジュアリーな印象で、かなり雰囲気が異なる。装備的にはベーシックモデルのSが289万8500円、レザーパッケージVセレクションは355万3000円と、プライスに65万円強の違いがあるから、それは当然かもしれない。ちなみに先代990Sの発表時の価格は、289万3000円という安価だった。 SレザーパッケージVセレクション、まずは高速道路での印象を書くと、すぐに実感したのは990Sと違ってステアリングを修正する必要なしに、真っ直ぐに走っていくことだった。ここにはラックピニオン電動パワーステアリングシステムの改良などが効いていると思われるが、ワインディングを得意とするスポーツカーであっても高速直進性は極めて大切なファクターだから、これはロードスターの大歓迎な進化だと言える。 ピークパワーが3kW上昇したというエンジンに関しては、通常の回転域では先代との違いを明確には感じ取れなかったが、1.5リッターという小さめの排気量をキープしているためもあって、スロットル操作に対して軽快に反応するのが気持ちいい。 というところで、こちらもワインディングロードに。リアにスタビライザーが加わり、新開発のアシンメトリックLSDが標準装備されるところも先代990Sとは異なるが、NDロードスターの持ち味である素直なハンドリングはそのまま継承されていて、コーナーではドライバーの望むままに気持ちよく向きを変えていく。軽快感に関しては990Sとの若干の違いが感じられ、やはり990Sは取り分け身軽だったのだと実感させられるが、ある意味で軽快感とバーターの関係にあるソリッド感は、990Sより上という印象だった。 では新開発のアシンメトリックLSDはどうだったか。今回の試乗の舞台は箱根の山道だったが、2速で抜ける上りのタイトコーナーで思い切ってスロットルを開いても内側後輪が空転したり、外輪がスライドして姿勢を乱すような兆候を見せることなく、前に向かって加速し続けた。アシンメトリックLSDの本当の価値は、サーキットのように長時間LSDが介入するようなコーナリングで発揮されるのだろうと思う。だから、少なくとも公道上でドライビングを愉しむ範囲では、LSDが必要かどうか微妙なところかもしれない。 というわけで、新型NDロードスターは確実に進化しているのを感じさせてくれると同時に、ボディサイズ、エンジン排気量、乗り易さ、それにプライスなど、どのポイントを採っても、2020年代のオープン2座スポーツカーとして他に代えがたい価値と魅力とを持った、唯一無二のクルマであること再認識したといっていい。 最後にもうひとつ‟ないモノねだり“をさせてもらえば、多くの点で進化した新型をベースに、新たな990Sを復活させて欲しいと思った。他のモデルより一段と軽快な身のこなしや、ソリッドなペダルフィールを実感させてくれるブレンボのブレ―キなど、990Sの乗り味は失うには惜しい魅力に溢れていたと思うからだ。もしもそれが実現するなら、プライスは先代の同モデルほどお買い得である必要はないかもしれないと、僕は思う。 SPECIFICATIONS 新型マツダ ロードスター Sレザーパッケージ Vセレクション ボディサイズ:全長3915×全幅1735×全高1235mm ホイールベース:2310mm 車両重量:1030kg 駆動方式:FR エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ 総排気量:1496cc 最高出力:136PS(100kW)/7000rpm 最大トルク:152Nm(15.5kgfm)/4500rpm トランスミッション:6段MT サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン(後)マルチリンク 価格:355万3000円 先代マツダ ロードスター 990S ボディサイズ:全長3915×全幅1735×全高1235mm ホイールベース:2310mm 車両重量:990kg 駆動方式:FR エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ 総排気量:1496cc 最高出力:132PS(97kW)/7000rpm 最大トルク:152Nm(15.5kgfm)/4500rpm トランスミッション:6段MT サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン(後)マルチリンク 価格:289万3000円(販売終了)
文= 吉田 匠