新旧ロードスターを乗り比べ! 大規模マイチェンでどう変わった?
先代990Sと新型Vセレクションを乗り比べる
今回は試乗するに当たって、マイナーチェンジ前と後の2台のロードスターを借り出し、新旧の違いをストレートに味わってみたいと思った。そこで、先代から最後期のヒット作である990Sを、新型から素のモデルといえるSを借りようとしたのだが、なんと後者の試乗車がトランスミッション不調に陥って貸出不可能だという。そこで、先代は990S、新型は装備豊富なSグレードのレザーパッケージVセレクションを借りることになった。もちろんトランスミッションは両車とも6段マニュアル、つまり6MTである。 横浜にあるマツダの研究所から2台で箱根を目指すが、僕はまず今や旧型となった990Sのステアリングを握る。2座のコクピットは同クラスのスポーツクーペと比べるとタイトな印象だが、僕が普段乗っているオープン2シーター、1960年代のロータス・エランS2というクラシックな英国車なんぞと比べると充分余裕があるし、ドライビングポジションも窮屈な印象なしに自然な感じに決まる。 横浜から第三京浜、東名と走って箱根に向かうまでのドライビングでは、990Sが日常の足として快適に使えるクルマであることをあらためて実感できた。乗り心地にはスポーツカーに想像される硬さや粗さがなく、適度にソフトで快適なものだし、1.5リッター4気筒エンジンも2000rpm以下から有効なトルクを生み出すので、街乗りや高速の渋滞も無理なくこなしていく。6段MTのギアシフトは短いストロークで確実に決まり、これもスポーツカーらしい。ただし、あくまで個人的な好みを言えば、シフトレバーはもう少し前方にあってもいいかなと思ったし、クラッチペダルがもう少し右側、つまりブレーキペダル寄りにあってもいいかなとは思ったが。 ところで990Sには、ひとつだけ実用車としてのステージで不満があった。高速道路を追い越し車線に乗ってクルージングするときなど、ステアリングの直進がイマイチ定まらず、常にドライバーが軽く当て舵を切ってやる必要を感じた。ステアリングを軽く握っているだけで、クルマが自然に真っ直ぐ走っていく、という感覚ではなかったのだ。 だが、いよいよスポーツカーのお愉しみのステージ、ワインディングロードに着くと、990Sはその魅力を存分に発揮してみせた。サスペンションのスプリングはソフトで、リアのスタビライザーも備わっていないから、コーナーに向かってステアリングを切り込むと、ボディが素直にロールするが、だからといってそれによる不安はまったくなく、4輪が確実に路面を捉えてノーズが気持ちよく内側に入っていく。990kgという、現代車としては今や稀な軽い車重が効果を発揮して、身のこなしが軽快なのも大きな魅力なのは言うまでもない。 というわけで990S、すでに旧型になったとはいえ、すこぶる魅力的なモデルだったことを、あらためて実感することができた。強いていえば、エンジンの回転感やサウンドにもうちょっと色気のようなものが欲しいというのは、それらが濃厚に備わるクラシックカー好きから見た、‟ない物ネダリ“なのかもしれない。