仲野太賀、吉田恵輔らが審査員を務めた「PFFアワード2024」、グランプリは川島佑喜監督の『I AM NOT INVISIBLE』に決定
第46回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)のメインイベントで、新人監督の登竜門として名高い自主映画のコンペティション「PFFアワード2024」表彰式が9月20日(金) 、都内で行われ、川島佑喜監督の『I AM NOT INVISIBLE』がグランプリを受賞。稲川悠司監督による『秋の風吹く』が準グランプリに輝いた。 【全ての写真】グランプリを獲得した川島佑喜監督ほか(全15枚) 今年の応募本数は、前年から135本増となる692本。16名のセレクション・メンバーによる、約4か月間の審査を経て、入選作品19本が決定した。最年少14歳を含む、18歳以下の監督による作品が3作品入選。監督たちの平均年齢も、昨年の26.1歳から、23.1歳と大きく若返り、新世代を感じさせる作品群となった。最終審査員として、小田香(フィルムメーカー/アーティスト)、小林エリカ(作家/アーティスト)、高崎卓馬(クリエイティブ・ディレクター/小説家)、仲野太賀(俳優)、吉田恵輔(映画監督)が審査にあたった。 グランプリを受賞した『I AM NOT INVISIBLE』は、“心が疲れた”監督が自身のルーツに迫るセルフドキュメンタリー。フィリピンのスラム街でたくましく生きる人々の姿を捉え、同国でサバイブしてきた祖母の現実的な言葉に心が揺れながら、魂の在り方を力強く探究する。 受賞に際し、川島監督は「映画を見ている間は、社会や現実、自分自身の辛いことや嫌なことから逃げることができた。今回、私は初めて逃げるのではなく、(映画で)立ち向かう術を見つけたと思います」と本作への切実な思いを吐露。「これからもいろんなことを考え続け、精進してまいります」と創作活動へのさらなる意欲を示していた。 プレゼンターを務めた小林は「この社会、そこに生きる一人ひとり、そして自分自身にどこまでも誠実に真摯に向き合った作品で、深い感銘を受けました」と作品に対する感想を述べた上で、「審査会でも全員の意見の一致でグランプリになった」と説明した。 そして「“見えなさ”に目を見開かせるという構造で、私たちの在り方も問われることで、作品を普遍的なものにしている」と選考理由を語り、「佑喜監督がこれからも、この世界を生き延び、弱さとしなやかさを大切にしながら、突き進み、私たちにまた新しい世界を見せてくれることを強く願っています」とエールを送った。 授賞式を終えて、仲野は「19作品、それぞれ個性が強くて、映画に対する情熱と愛、何とか自分の表現を突き通したいという思いを感じ、観るだけでパワーをもらえる作品ばかりでした。皆さんのキラキラした表情を見ると、やっぱり映画は素敵だなと思う」と若き才能を激励。吉田監督はPFFアワードに落選した思い出を語りつつ、「でも、今は結構活躍しています(笑)」と笑いを誘い、「それは(作品を)作り続けたから、今があると思っています。皆様もすごい才能を持った方々なので、続けてほしいと思います。プロになると苦しいこと、理不尽なこともありますが、それでもやる価値があると思える瞬間があるはず」と背中を押していた。 なお、グランプリを受賞した『I AM NOT INVISIBLE』は、10月28日から開催される「第37回東京国際映画祭」にて特別上映される。 第46回を迎えた今年は、コンペティション「PFFアワード2024」をはじめ、招待作品部門では、昨年からスタートした企画(2028年の第50回に向けた5年連続企画)の第2弾「自由だぜ!80~90年代自主映画」、今も色褪せないモダンな作風を紹介する「生誕100年・増村保造新発見!」、映画を志す人がヒントを掴む時間「PFFスペシャル映画講座」、【緊急特集】「中村靖日さんを偲んで」、新たな企画シリーズ「はじまりの映画~創るよろこび、観る驚き~」、第28回PFFスカラシップ作品『道行き』(中尾広道監督)お披露目上映など、映画祭でしか観ることのできない上映企画、映画講座が開かれた。 取材・文・撮影:内田涼 ※吉田恵輔の「吉」は「つちよし」が正式表記 <グランプリ> 『I AM NOT INVISIBLE』監督:川島佑喜 <準グランプリ> 『秋の風吹く』監督:稲川悠司 <審査員特別賞> 『これらが全てFantasyだったあの頃。』監督:林真子 『END of DINOSAURS』監督:Kako Annika Esashi 『松坂さん』監督:畔柳太陽 <エンタテインメント賞(ホリプロ賞)> 『さよならピーチ』監督:遠藤愛海 <映画ファン賞(ぴあニスト賞)> 『ちあきの変拍子』監督:白岩周也、福留莉玖 <観客賞> 『あなたの代わりのあなた展』監督:山田遊 <入選作19作品> ※作品名50音順。敬称略。年齢、職業・学校名は応募時のもの。 ●『I AM NOT INVISIBLE』監督:川島佑喜(21歳/東京都出身/武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科) ●『アイスリンク』監督:王 紫音(23歳/中国出身/清華大学美術学院) ●『秋の風吹く』監督:稲川悠司(26歳/愛知県出身/フリーター) ●『あなたの代わりのあなた展』監督:山田 遊(28歳/東京都出身/劇団主宰) ●『Into a Landscape』監督:山中千尋(30歳/兵庫県出身/東京藝術大学大学院 映像研究科 アニメーション専攻) ●『END of DINOSAURS』監督:Kako Annika Esashi(26歳/アメリカ出身/国連職員) ●『季節のない愛』監督:中里有希(22歳/山形県出身/東北芸術工科大学 デザイン工学部) ●『鎖』監督:杜 詩琪(25歳/中国出身/武蔵野美術大学大学院 映像・写真コース) ●『これらが全てFantasyだったあの頃。』監督:林 真子(27歳/兵庫県出身/会社員) ●『さようならイカロス』監督:田辺洸成(20歳/福岡県出身/青山学院大学 総合文化政策学部) ●『さよならピーチ』監督:遠藤愛海(22歳/静岡県出身/京都芸術大学 芸術学部 映画学科) ●『サンライズ』監督:八代夏歌(18歳/愛知県出身/愛知県立旭丘高等学校 美術科) ●『正しい家族の付き合い方』監督:ひがし沙優(14歳/大阪府出身/中学生) ●『ちあきの変拍子』監督:白岩周也、福留莉玖(18歳、17歳/鳥取県出身/米子工業高等専門学校 放送部) ●『チューリップちゃん』監督:渡辺咲樹(22歳/宮城県出身/東北芸術工科大学 デザイン工学部) ●『分離の予感』監督:何 英傑(25歳/中国出身/武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科) ●『松坂さん』監督:畔柳太陽(25歳/愛知県出身/フリーター) ●『よそのくに』監督:尾関彩羽(21歳/愛知県出身/名古屋学芸大学 映像メディア学科) ●『わたしのゆくえ』監督:藤居恭平(32歳/滋賀県出身/会社員) 【東京】 日程:2024年9月7日(土)~21日(土)※月曜休館 会場:国立映画アーカイブ(東京都中央区京橋3-7-6) 【京都】 日程:2024年11月9日(土)~17日(日)※月曜休館 会場:京都文化博物館(京都市中京区三条高倉)