「おじさんドラマ」すっかり定着の底知れぬ魅力 ベテラン俳優が好演、世間の“おじさん観”も変化?
これら一連のドラマが当たったことによって、「おじさんドラマ」は晴れてニッチなものではなくなった。『おっさんずラブ』が大ブームを巻き起こしたのは2018年のことだが、そうなる土壌はこうして少しずつ整えられていた。 ■スター主義からの転換、“おじさん観”の変化 ドラマづくりに関して言うと、こうした「おじさんドラマ」の台頭はスター主義から転換するひとつのきっかけになったとも言えそうだ。 ビッグスターありきのドラマづくりではなく、設定の面白さや企画のユニークさで勝負するドラマづくりを重視する流れを「おじさんドラマ」の成功は促したのではあるまいか。
またこうした「おじさんドラマ」からは、おじさんという存在に対する世間のイメージが変わってきている部分も垣間見える。 少し前までなら、おじさんはがさつで考えが古いといったような凝り固まったイメージが一般的だった。だからドラマでの扱いもそうだった。 だが最近の「おじさんドラマ」では、もっとおじさんは繊細だし、柔軟性がないわけではないものとして描かれるようになっている。野間口徹、吉田鋼太郎、阿部サダヲ、原田泰造らが演じるおじさんを見れば、それは明らかだ。
もちろん現実にはそうではないおじさんもまだまだ多いだろう。だがおじさんだって変わるべきところは変われるし、新しい価値観を認めていないわけではない。 「おじさんドラマ」に出てくるおじさんには、そんなささやかな希望が感じられる。時代も転換期にあるいま、だから「おじさんドラマ」はこれほどつくられ、支持されるのではないだろうか。
太田 省一 :社会学者、文筆家