サザンカパートナーズ・牛越直社長 インタビュー ~ 待ったなしの早期再生、次世代を担う人材は組織の中に ~
―金融機関がトスアップしても、企業側の「ファンドアレルギー」が強いこともある
圓尾:そうしたケースは少なくない。先日も支援企業の従業員向け説明会を開催したが、「ファンド?ハゲタカか?」との受け止めもあった。だからこそ、官民ファンドであることや商工中金が関与していることなどを丁寧に説明して理解を得るようにしている。経営陣や取引先も含め、丁寧なケアは当然必要だ。 牛越:サザンカと名付けた理由もそこにある。LBPで支援した企業の経営者に支援完了後にインタビューしたが、「ファンドは進駐軍」と言われた。ファンドに対するアレルギーは今でも根強いと感じた。なので、名前は企業に寄り添うことを表したものにしたかった。 最終的には商工中金メンバーで考えてもらった「ひたむきさ」「困難に打ち勝つ」などを花言葉として持つサザンカとなった。支援企業には、名前の由来を含め、我々が何故この仕事をしているのかについてもお話している。商工中金はこうした想いを体現した方が多いので、一緒にやっていて全く違和感がない。
―債務者区分と経営者の年齢の話があったが、そもそも後継者がいない企業が多い
牛越:TSRは「後継者不在率」(※7)を出しているが、不在の定義は難しい。大切なことなので昔、TSRに聞いたことがある。企業へ「後継者は居ますか?」と聞き取りして集計しているとの回答だった。中小企業の場合、聞き取り対象は現役の経営者が中心だと思うが、「オレに成り代われる奴はいない」となるだろう。つまり、「社長による後継者認定率」となっている可能性がある。 現在の調査手法による後継者不在率は高く出やすいので、M&A仲介ビジネスを加速させたい方には刺さる。ただ、再生実務の経験から言うと、多くの企業で後継者になりうる人材は必ずいる。 中小企業の組織は、大きく分けて「文鎮型」と「ピラミッド型」に分かれる。前者は例えば小売業で社長が経営から管理まで全て担い、ほかはアルバイトのような形態だ。このケースで後継者を探すのは難しい。一方、ピラミッド型では、各現場で責任感を持って働いている人は後継者候補となる。後継者を考える場合、いわゆる番頭や管理部長など金融機関のカウンターパートとなっている人が思い浮かぶかもしれないが、その方々は「現経営陣」だ。 製品開発や製造現場、営業チームなどの縁の下の力持ちとして会社を支えている若手(30~50歳代)の中心人物を思い浮かべて欲しい。再生支援の現場では、こういった方々が後継者候補になる。 圓尾:そうした方が頭角を現して再生が動き出した瞬間は、再生支援に取り組むうえでの大きな喜びだ。ただ、そうした人材は経営を担ったことはないケースが多いため、本ファンドで経営人材を補完する。 ※7 2023年「後継者不在率」調査(2023年11月14日)。不在率は61.09%(前年比1.19ポイント上昇)で、初めて60%を超えた。信用調査時の当該企業へのインタビューで収集されたデータを基に算出している