「主婦からすれば“もうやってられない”」 “主婦年金”が廃止されるとどうなる? 年金制度改革があなたの家庭に与える影響
「夫が収入を得て妻は家事」は昔の話に
ピーク時の1995年に1220万人もいた3号は、今年5月末時点では676万人とほぼ半減している。 「これまでは、廃止するにしても対象者の数が多かったので慎重論が勝っていたわけですが、人数が減るにつれて廃止の議論は活発化していきました」 と、秋津氏。 「とはいえまだまだ人数が多いため、次の選挙で印象が悪くなると考えた政治家が廃止見送りの方向に仕向けたのでしょう。ただ、5年後か10年後かは分かりませんがいずれ廃止されることになると思われます。一昔前までは夫が収入を得て妻は家事、という考え方が主流でしたが、これからは個人単位で考えなければならないでしょう」(同)
「“アメ”として用意されたのが主婦年金の創設」
3号は86年に始まった制度である。 「これによって、いわゆる専業主婦を中心とした被扶養配偶者は、自分で保険料を払わなくても基礎年金がもらえるようになったのです。美しく言えば、専業主婦の家庭内労働に報いよう、という話です」 社会保険労務士の北村庄吾氏はそう解説する。 「それまで主婦に関しては、国民年金に入るかどうかは任意でした。しかし昭和50年代中盤くらいから熟年離婚・高齢離婚が増えてきて、離婚した専業主婦の方が国民年金に加入していないと無年金になってしまう、という問題が3号成立の背景としてありました」(同) さらに、別の要因もあったという。 「昭和61(1986)年4月の改正というのは、年金制度にとってドラスティックな改正で、そこから20年ほどかけて3割程度給付水準を下げていく、つまり年金減額が目的だったのです。加入者にとって不利益になるような変更ばかりだとなかなか法案が通りにくいので、いわば“アメ”として用意されたのが主婦年金の創設でした」(同)
「主婦の方からすれば“もうやってられないよ”」
今は「不公平」と批判されることが多い3号だが、次のような試算もある。年収600万円の夫と3号の配偶者という片働き世帯と、年収300万円ずつで計600万円の会社員の共働き世帯では、世帯単位で支払う保険料も、受け取る年金額もほぼ同じになるというのだ。 「3号が廃止され、被扶養配偶者が3号から1号になってしまうと、片働き世帯と共働き世帯の受け取れる年金額は同じままですが、片働き世帯では配偶者も国民年金保険料を支払わねばならないので、単純に負担だけが増えてしまいます」 と、北村氏は指摘する。 「すでに作ってしまった3号制度をまた変えるということになると、主婦の方からすれば“もうやってられないよ”という話だと思います。元々は年金が欲しかったら自分で払ってね、という話だったのが、保険料を払わなくても年金がもらえるようにするよ、と言われ、今度はやっぱり自分で払えと国民年金に強制加入させられるわけですから理不尽そのものです」