ロッカー室に響いたベテランの声「折れたらダメだぞ」 9年ぶりVへの壁…イレブンに募る違和感【コラム】
「攻撃的すぎる部分であるとか、リスク管理ができていない部分も多い」
迎えた浦和戦は、相手の倍近い23本ものシュートを放ちながら、またもゴールを奪えなかった。対照的に前半終了間際にミス絡みで先制を許すと、動揺を引きずったまま後半11分にも失点。その後は前がかりになっては、何度もカウンターを浴びる展開となり、同41分に3失点目を献上して万事休した。 チャンスもあった。後半20分。MF松本泰志のスルーパスに抜け出したFW加藤陸次樹が、ファーストタッチでボールをDFマリウス・ホイブラーテンの前方へ運んで一気に抜け出す。目の前にいるのは浦和の守護神であるGK西川周作だけ。しかし、右足から放たれた一撃は左ポストの外側をかすめた。 その場に仰向けで倒れ、両手で顔を覆った加藤は「今日の負けは僕の責任です」と絞り出した。 「ファーのコースが空いていなかったので、とっさにニアへ蹴ったんですけど。西川選手の圧迫感もありましたけど、思ったようにボールに当たらなかった。あれを決めていれば流れは変わっていたのに……」 4度目の優勝へ、11戦連続無敗だった時期には死角がないように映った広島に、残り2試合となったいま、いったい何が起こっているのか? 荒木と同じニュアンスの言葉を、加藤も浦和戦後に残している。 「正直、ちょっと焦りもあるかもしれない。勝たなくちゃいけない、というプレッシャーもありますし、それゆえに攻撃的すぎる部分であるとか、リスク管理ができていない部分も多い。最近はカウンターからの失点も多いし、そこは次戦までに修正しなくちゃいけない部分だと思っています」 中断明けの湘南戦でエアポケットに陥り、京都戦で生じた焦りが、浦和戦ではプレッシャーへ変わった、と表現すればいいだろうか。それでも、8月7日の東京ヴェルディ戦以来、今シーズン限りでの現役引退発表後では初めてベンチ入りした38歳の大ベテラン、MF青山敏弘は心配無用を強調した。 「この苦しさを自分たちで乗り越えなきゃいけないし、みんなが通る道だと思っている。それを乗り越えて初めて掴めるものなので。いまはそこを試されているところだし、優勝とはそういうものでしょう。シーズンのこの段階で3連敗しても、まだまだ可能性は残っている。何ひとつあきらめる必要はないですよね」 岡山県の強豪である作陽高から2004年シーズンに加入した広島ひと筋で21年目を迎えているバンディエラにして、レジェンドは、35歳のDF塩谷司とともに、広島の3度のリーグ優勝をすべて経験している。 2012年の初優勝はベガルタ仙台との、2013年は横浜F・マリノスとの壮絶なデッドヒートをそれぞれ制した。2ステージ制だった2015年は第2ステージを圧倒的な力で制し、迎えたチャンピオンシップでは下剋上で勝ち上がってきたガンバ大阪を2戦合計4-3で振り切って美酒に酔った。