韓国の若者は食事の回数や野菜を減らし、中高年は会社の倒産や老後資産に頭を抱える 「半地下」の格差社会は今…与党大敗の総選挙ルポ
韓国の生鮮食品の値段は今年2、3月、前年同月比で2割高くなった。2019年のポン・ジュノ監督の映画「パラサイト 半地下の家族」が問題提起した経済格差も依然深刻だ。2022年のデータでは、大企業労働者の月平均所得は591万ウォン(約66万円)だった一方、中小企業の労働者は286万ウォンで、ほぼ2倍の開きがある。 韓国で「NO JAPAN」が再燃する可能性は?
4月10日の総選挙で、与党は全300議席の3分の1をわずかに上回る108議席で大敗した。韓国の人たちは今の暮らしと政治にどんな思いを抱いて投票へ行ったのだろうか。(共同通信ソウル支局 富樫顕大) ▽失業率改善と破産増大 2022年5月に発足した尹錫悦政権は、法人税や、複数の住宅を持つ人の固定資産税を減らした。導入予定だった、株式投資などで得た利益への課税「金融投資所得税」の廃止も打ち出した。 失業率は2021年の3・7%から、2022年は2・9%、昨年は2・7%と改善した。尹政権は、減税や規制緩和の成果だとアピールしている。 一方、韓国最高裁の資料によると、昨年の企業の破産申請件数は、前年より65%増えた。政策の恩恵は、どこまで及んでいるのだろうか。 ▽会社続けられるか … ソウル西方の仁川市には、自動車やスマートフォン向けの金型を製造する小規模の工場が集まる工業団地がある。従業員4人を抱える会社の男性社長(54)は「原材料価格は上がるのに、大企業は納品価格を上げない。2、3年前より利益は3、4割減り、会社を続けられるかどうか悩んでいる」と打ち明けた。
以前は日本への輸出が売り上げの7割を占めたが、2019年からは日本企業の発注を中国に取られてしまったという。「長持ちしなくても安い製品が好まれるようになり、質が劣っても単価が安い中国の物が選ばれるようになった」と男性社長はこぼした。 ▽食費代補助アップを ソウルの名門大学、延世大で、非正規の清掃員として働く黄琴淳さん(62)は、毎月の手取りが190万ウォン(約21万円)ほどだ。50代前半まで中小企業の事務職を勤め、貯金も蓄えた。しかし詐欺に遭って財産を失ってしまった。1人暮らしの黄さんは、食費をできるだけ節約しても、老後資金への貯金に回すお金が毎月20~30万ウォンしか残らない。清掃員らは、毎月の食費代補助を2万ウォンアップさせることを求めて労使交渉をしている。 「(自分の大学時代が)軍事政権時代だったのに比べると、今の大学生は自由でいいなと思う」と語る一方で、「就職準備のために図書館で勉強ばっかりでかわいそうだ」とおもんぱかった。