アングル:ヘッジファンド、来年の市場変動に向け「マクロ」戦略が最も有望
Nell Mackenzie Carolina Mandl Summer Zhen [ロンドン 18日 ロイター] - トランプ次期米大統領の就任を控え、投資家らは世界の政策決定が経済情勢にどのような影響を与え、金融市場にどのように波及するのかに注目している。こうした中、来年に最も有望視されているヘッジファンドの投資戦略は「マクロ」だ。 ヘッジファンドのリターンは今年、米大統領選などの政治的な動きや、日銀の利上げなどの金融政策に端を発した市場の乱高下による恩恵を受けた。計7人のヘッジファンド投資家とポートフォリオマネジャーはロイターに対し、投資家は今後さらにボラティリティーが高まる事態に備えているとの見方を示した。 コービン・キャピタル・パートナーズの最高投資責任者(CIO)のクレイグ・バーグストロム氏は「政治的な背景がさらに変動しており、それが財政政策と金融政策の両方にどのような意味を持つかを考えると、現時点でマクロは興味深い」と語った。 トランプ次期政権下で米国の関税が引き上げられれば、世界経済に新たな打撃を与え、中国の人民元とユーロをさらに弱め、インフレ圧力に拍車をかけて米連邦準備理事会(FRB)の利下げを遅らせる可能性がある。 暗号資産(仮想通貨)に特化したヘッジファンドは2024年に他の戦略を圧倒し、英調査会社プレキンは年率24.5%のリターンになると推計している。一方、投資家は25年についてはあまり期待していない。 ソシエテ・ジェネラルが今年11月に調べた投資会社239社が向こう1年間で計画しているヘッジファンドの戦略リストによると、マクロが首位となった一方、仮想通貨が最下位だった。 ロイターが確認した顧客向けのノートによると、調査対象の約5分の2がマクロへの投資を目指しており、国債取引への関心は低下している。一方、コモディティー(商品)取引ファンドは2位、株式取引ファンドは3位だった。 投資運用会社AQRのマクロ戦略グループ共同責任者、ジョーダン・ブルックス氏は、ソブリン債が重要な投資先ではなくなってきていることを認めて「インフレはよりバランスが取れてきた。ここからは全体的に確実性が低くなると考えている」と指摘した。 <仮想通貨はまだ> トランプ氏は仮想通貨の規制を緩くし、ビットコインの戦略備蓄制度を創設すると約束しているが、一部のヘッジファンド投資家は納得してはいない。 1750億ドル規模の資産を運用するマン・グループのソリューション部門責任者、キャロル・ワード氏は「仮想通貨の取引戦略に対するソリューション側では、機関投資家の需要はあまり見られない」と語る。 ケンブリッジ・アソシエイツのシニア投資ディレクター、ベンジャミン・ロー氏は、アジアを拠点とするファンドのいくつかが小規模な仮想通貨投資を検討しているものの、依然として実現していないと言及。仮想通貨に関して「定義が非常に広範なため、既存の投資家からさらに多くの質問が寄せられるかもしれない」とした。 UBSアセット・マネジメントのヘッジファンド・ソリューション担当CIOのエド・ルリ氏は「非スペシャリストのヘッジファンドではそこまで大規模なエクスポージャーにはなっていない。デジタル資産の取引所は規制されておらず、風評や詐欺のリスクを抱えるものもある」と話す。 仮想通貨関連株を専門とする香港拠点のヘッジファンド、ネクストジェン・デジタル・ベンチャーはコインベース、マイクロストラテジー、マラソン・デジタル・ホールディングスなどの銘柄へのエクスポージャーによって今年11月までに2.116倍に膨らんだ。 創業者のジェイソン・ホアン氏は仮想通貨関連に特化した2つ目のファンドの設立を準備しており、楽観視している一方で、ビットコインは来年ピーク局面に達する可能性があると警告している。 一方、ミレニアム・マネジメント、カピュラ・マネジメント、チューダー・インベストメントなどのヘッジファンドは24年第3・四半期に米国のビットコイン上場投資信託(ETF)へのエクスポージャーを引き上げたことが提出文書に明らかになった。 複数の戦略を組み合わせたマルチストラテジー・ファンドは、企業としてビットコインを最も多く保有しているソフトウエア企業マイクロストラテジーの転換社債を購入している。マイクロストラテジーの株価は今年に入ってから6倍近くになった。 スカイブリッジの創業者、アンソニー・スカラムッチ氏は仮想通貨の規制に関する議論が始まったばかりのため、より多くの大口投資家を引き付けるにはしばらく時間がかかるとの見方を示した。