10月米CPIと155円台に乗せたドル円レート:トランプ政権では日本のドル売り円買い介入はより容易になるか:円安は日本銀行の追加利上げを後押し
政府のドル売り円買い介入は従来よりも容易か
ドル円レートが1ドル155円台に乗せ、さらに156円に接近してきていることに、日本政府は警戒を強めているだろう。今年7月の政府の為替介入などをきっかけに、1ドル161円台から9月には一時139円台まで円安修正が進んだが、既にその「3分の2戻し」の水準となっている。 今後ドル円レートが1ドル160円に近づくようであれば、その前に政府はドル売り円買いの為替介入に踏み切ると見ておきたい。現在、米国政府は政権移譲の中にあることから、日本の為替介入に対する米財務省の牽制は従来ほどには強くなく、日本政府によっては為替介入を実施しやすい時期と言えるだろう。また、来年1月にトランプ政権が発足すれば、日本政府のドル売り円買い介入はより容易になる可能性がある。トランプ次期大統領はドル安志向が強いためだ。
1ドル160円を大きく超えて円安が進むことは避けられるか
現時点で与党や国民民主党などは、日本銀行の利上げに慎重な姿勢を示しているが、円安が一段と進み、ドル円レートが1ドル160円に接近し、政府が為替介入を実施する場合、日本銀行にも円安阻止に向けた政府との協調策の実施を求め、追加利上げ容認に動くのではないか。 そこまで円安が進まないことを前提に、政治的な制約を受ける日本銀行の利上げは来年1月まで後ずれすることをメインシナリオとしたいが、上記のようなケースとなれば、日本銀行は12月の会合で利上げに踏み切るだろう。2つのシナリオの確率はかなり接近してきている。 政府の為替介入と為替の安定を意識した日本銀行の利上げという為替の安定に向けた協調策がとられることで、1ドル160円を大きく超えて円安が進むことは避けられると見ておきたい。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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