『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024』で注目すべき5つの展示。
■ジャイシング・ナゲシュワラン『 I Feel Like a Fish』 @TIME’S
インドのカースト制度の最下層、ダリットとして生まれたジャイシング・ナゲシュワラン。小学校を設立した祖母のもと、教育を受けることができた彼は、ダリットを忘れるため都会へと出て写真家として活躍する。ところが大病を患い、パンデミックで故郷へと戻ることを余儀なくされる。そこで改めて大切さに気づいた自身の家族を撮影し、ダリットに対する残虐行為やカースト差別を訴えているのだ。
水槽に泳ぐ魚を見るたびに、自分自身を見ているようだというナゲシュワラン。「魚には向こう側に広がる世界は見えているけれど、魚がその世界に触れようとするとガラスという壁が立ちはだかる。インドのカースト制度はそのような金魚鉢を数多く生み出し、カーストが低いほど鉢のサイズは小さくなります」
会場となるのは高瀬川沿いの商業複合施設〈TIME’S〉。1984年に建てられた安藤忠雄の初期作で、コンクリートブロックが印象的なビルだ。近年、テナントが撤退し閉鎖されていたため、中に入ってじっくり建造物を見ることができるのは数年ぶりのこと。同時開催されている『KG+』の展示と共に、初期ANDO建築の空間もじっくりと楽しみたい。
◾️川内倫子×潮田登久子『From Our Windows』@京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階
グローバリーラグジュアリーグループ〈ケリング〉が、文化と芸術の分野において活躍する女性に焦点をあてるプログラム「ウーマン・イン・モーション」としてサポートするのが川内倫子と潮田登久子の対話的な展覧会『From Our Windows』だ。 国内外で高い評価を受ける川内が、本展でのパートナーとして名を挙げたのは、黎明期から女性写真家として活動し、目の前の生活に真摯に向き合う存在としてリスペクトするという潮田。それぞれ身近な家族を撮影した2つの作品を展示。あえてスペースを分けることで、被写体やルーツに関する共通点を浮かび上がらせている。
『Cui Cui』は川内が学生の頃から13年間にわたり撮り続けたシリーズ。家族の中でもっとも高齢だった祖父を死に近い存在として撮り始めたことに始まり、甥っ子が誕生するまでの家族の循環を見つめ続けた作品。『as it is』は自身の出産と3年間にわたる子育てのなかで出会った子どもの姿や身近な風景を捉えている。