眠らせない、懲罰房300日、100日連続でプーチン氏の演説聞かされる…ナワリヌイ氏のあまりに過酷な受刑生活 死因は最も「簡便」な病名
同氏は21年3月末、激しい背中の痛みと足の感覚のまひに襲われ、医師の受診を求めたが拒否されたためハンガーストライキを開始。健康状態は悪化し4月には、モスクワの医師ら30人超がナワリヌイ氏の受診を認めるよう求める公開書簡を発表。ようやく受診が実現した。 23年1月にも高熱と激しいせきに苦しみ、投薬や入院を求めたが拒否され、500人近い医師らがプーチン大統領に対する公開書簡で、適切な医療提供を訴えた。同氏は結局回復したが、体重を7キロ減らすなど衰弱した。 精神的な矯正措置も行われた。ナワリヌイ氏は23年7月、X(旧ツイッター)で、同年2月の議会でのプーチン大統領の演説を100日間連続強制的に聞かされたと語った。刑務所当局の目的は「社会に対する敬意ある態度を養成するため」だったという。 ▽整然と実行された殺人 22年6月に同じウラジーミル州にある警備態勢がより厳しい刑務所に移送された後、懲罰房に入れられることが頻発した。ナワリヌイ氏の広報担当者キーラ・ヤルムイシさんによると、その回数は計27回に及び、死亡の2日前に命じられた16日間の最後の懲罰房入りが終われば、計308日となるはずだった。
ナワリヌイ氏側の主張によると、懲罰の対象となった「罪」はいずれも軽微なもので、これほどの回数の懲罰房入りの理由には当たらない。 例を挙げると、「上着のボタンを留めない」「刑務所職員にきちんと自己紹介をしない」「廊下を歩く際に腕を後ろに回す規則を守らない」「同房者に猥雑な言葉で話しかけた」などの理由で、最大16日間の懲罰房入りを命じられたという。 懲罰房は独房で十分な冷暖房もなく、特に昨年12月に移送された北極圏の刑務所では寒さが厳しかったことが想像できる。受刑者は睡眠以外は横になることを禁じられる。差し入れや面会、衣服など所持品の持ち込みは許されず、房外に出られるのは散歩のため1日1時間だけ。食事は1回10分間に制限される。「服役するルーシ」のイワノフ氏は「これは拷問に等しい」と批判する。 ロシアの人権団体「OVDインフォ」はナワリヌイ氏の死後、「ナワリヌイ氏の死亡は計画的に、整然と実行された殺人だ。劣悪な環境の刑務所で、彼を毒殺したり暴力行為で殺害したりする必要はなかった。単に(彼が死ぬのを)待つだけで良かった」との声明を発表した。