眠らせない、懲罰房300日、100日連続でプーチン氏の演説聞かされる…ナワリヌイ氏のあまりに過酷な受刑生活 死因は最も「簡便」な病名
ロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏が2月16日、収監先の北極圏の刑務所で、47歳で死亡した。当局から死因について詳細な説明はなく、さまざまな臆測が流れるが、刑務所での過酷な環境が同氏の健康を損ない命を脅かしていたとの指摘が相次ぐ。ロシアの受刑者の人権問題にも厳しい目が向けられている。(共同通信=太田清) 【写真】公判中にハートマークをつくるナワリヌイ氏
▽ウクライナ当局「死因は血栓症」 焦点となっているのはナワリヌイ氏の死因。同氏は2020年8月、シベリアのトムスクからモスクワに向かう機内で体調不良を訴え、その後、ドイツの病院に移送。検査の結果、旧ソ連が化学兵器として開発した神経剤「ノビチョク」を使用した毒殺未遂だったとの疑いが強まった。 このため、今回も暗殺だったのではとの見方もささやかれるが、国営メディア「ロシア・トゥデー」は死亡の直後、消息筋の話として死因は血栓症だと伝えた。当局はまた、刑務所を訪れた母親と弁護士に対して、死因は「突然死症候群」だと説明した。 しかし、受刑者やその家族を支援するために設立された団体「服役するルーシ」メンバーのイワン・イワノフ氏は、人権・汚職問題を中心としたニュースを伝えるサイト「タキエ・ジェラ(ロシア語で『そういうことだ』の意)」に対し、「司法解剖もしないのに、死因を血栓症と断定することはできない。血栓症は刑務所当局にとり、最も簡便な診断だ」と主張。
さらに、ロシアの刑務所・拘束施設を運営する連邦刑執行庁元職員で人権活動家のアンナ・カレトニコワ氏はフェイスブックに、同庁の医師が「死因としての血栓症は(そうではないと)証明するのが難しく、どのような死亡例にも適用できる、万能で便利な病名だ」と話したことを紹介した。 一方、ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長は2月25日、具体的な情報源は明らかにしなかったものの、ナワリヌイ氏の死因は血栓によるもので、自然死だったと語った。ある程度裏付けられた情報だとしている。ウクライナメディア、ウクラインスカ・プラウダが伝えた。 ▽嫌がらせ ナワリヌイ氏やその弁護士の主張によると、収監された同氏は刑務所当局からさまざまな「嫌がらせ」を受けていた。 最初に収監されたモスクワ東方ウラジーミル州の刑務所では、「逃亡の恐れのある」受刑者とされ、守衛が毎夜、1時間おきに見回りに来て顔を懐中電灯で照らし、大声で房内にいることを確認するため眠ることができなくなった。