オランダの決勝進出を阻んだWBCの裏事情
WBCの準決勝、プエルトリコ対オランダ戦が20日(日本時間21日)、ロスのドジャースタジアムで行われ、延長11回、プエルトリコが4-3のサヨナラで2大会連続の決勝進出を決めた。3-3の同点のまま、延長戦にもつれこみタイブレーク方式が採用される11回に突入。オランダの攻撃を封じたプエルトリコは、バントで送り、一死満塁となってからロサリオのセンターへの犠牲フライがサヨナラ打となった。 序盤は一回のバレンティンの先制2ラン、すぐさまその裏に2年前の新人王、コレアの同点2ランなどで進んだ激闘の勝敗を分けることになったのは延長戦からの投手起用だった。 オランダは予備登録枠を使って緊急招集した地元ドジャースのストッパー、ジャンセンを9回から投入。150キロ台のカットボールという魔球にプエルトリコ打線は手も足も出ず、わずか9球で終わらせたが、延長10回への続投はなかった。 一方、プエルトリコは、マリナーズの22歳の若きストッパー、ディアスを延長10回から送り込む。こちらも、159キロのストレートでオランダ打線をよせつけない。抜けたボールがバレンティンの頭部を襲い、睨み合いから両軍がベンチ前に飛び出し一触即発のあわや乱闘騒ぎにまでなったが、モリーナがバレンティンを説得、コレアがディアスを落ち着かせて、見事に三振。結局、三者連続三振で、延長11回のタイブレークへ突入した。 プエルトリコはディアズが続投した。 11回からは無死一二塁からスタートする大会規定によるタイブレーク。プエルトリコはバントで送られ、満塁策をとり、スミスを4-6-3の併殺打。無失点に封じ込めたディアスは吠え、プエルトリコはもう優勝騒ぎだった。 その裏、オランダのマウンドにいたのは、10回からジャンセンの後を受けたファンミルだった。3年前、楽天でプレーした長身右腕で、2次ラウンドの日本戦でも好投している。ファンミルは、2イニング目に突入していた。前の打席ではバントに失敗していたモリーナが、今度はバントを決めて、オランダも満塁策。だが、ロサリオの少し浅めのセンターへのフライに三塁走者のコレアが全力疾走でサヨナラホームへ滑り込んだ。 なぜオランダのジャンセンは1イニング、たった9球で降板したのか。 ロスアンゼンルスタイムの報道によると、試合後、オランダのミューレン監督は「それが我々がドジャースと交わした約束だった」と答えたという。同紙によると、ジャンセンは1次、2次ラウンドの参加を辞退。その後、春季キャンプでの調整が順調に進んだため、予備登録枠を使っての準決勝、決勝での出場を球団の了承を得て決意したが、例え球数が少なくとも1試合1イニングだけの限定起用が、出場に関してドジャースが条件にした“縛り”だったというのである。