がんと共に働く「私はがんサバイバー」 病気でも何も犠牲にしないために大事なこと #令和に働く
がんだけに限らない企業に求められていることは?
社員数が数千人の大企業では毎年のように何人かががんになって当たり前。数十人の中小企業でも誰がいつがんにかかっても不思議ではない「がんと生きる」ことが日常になった世界で、企業側に求められることはどんなことでしょうか? 企業側も「治療に専念してもらうために仕事を辞めたほうが本人のためにもいいのでは?」と先回りしたり、「戦力にならないから辞めてほしい」と考えたりしてがんによる離職を後押ししてしまうケースがあるようです。しかし、少子高齢化社会で人手不足と言われる中、業務に精通した貴重な人材を失ってしまうのは企業や社会にとっても損失です。 「通院のために有給休暇を半日や時間単位で取得できたり、通勤ラッシュを避けて時差出勤するだけで働き続けられる場合もあります。企業側が少しだけ柔軟に配慮することで貴重な人材を失わずに済みます」(若尾医師) 若尾医師によると、企業ががん対策に取り組むことは決してがん患者のためだけではないそう。 「働いている社員を大事にするということが基本。それはがんになった社員のためだけではなく周りのためでもあります。『病気になったらすぐに厄介払いされてしまう』ではなくて『病気になっても働き続けられる』と周りが思うことで、ほかの社員のモチベーションや士気が上がることにもつながります。がんだけではなくて、介護や子育てなどいろいろな事情を抱えている人たちのそれぞれの強みやスキルをいかに活かしていくか? ということにもつながり、令和の時代の企業や経営者に求められている経営課題だと思います」 がんになっても安心して働ける職場づくりに取り組むことは、さまざまな事情を抱えながら働く人たちがそれぞれの強みやスキルを活かしながら働くための環境づくりにもつながるといえそうです。
「自分の状態を伝えること」は決して“わがまま”ではない
がんに限らず、さまざまな事情を抱えた社員のそれぞれの強みを活かしていくために、働く側が意識したいことは? 「患者自身も自分の状態と希望を伝えることが大事」と若尾医師。「がんになる前と変わらずに職場とうまくいくやっていける人はコミュニケーション能力が高いというか、自分の状態を会社や主治医にしっかりと伝えている人が多い印象です。例えば、自分がやっている仕事は事務作業だけなのか、荷物や重い物を持つ作業が発生するのか? 通勤時間は長いのか? など自分についての情報をなるべく詳しく伝えられれば医師も『それならこの日から復職できそうですね』と判断ができます。会社側にも今後の治療の見通しや自分がどんなふうに働きたいかの希望を伝えることで、全てを叶えることは難しくても出勤時間を少しだけずらすなどの柔軟な対応が可能かもしれません」 記者自身も投薬で抗がん剤治療を行っている最中ですが、時々電車での通勤がしんどいと感じることがあります。ただそれを会社や周りに伝えるのは「わがままなのだろうか?」と躊躇(ちゅうちょ)したことも。若尾医師は「自分の状態を相手に伝えるのは決して“わがまま”ではありません」とキッパリ。少し気が楽になりました。 最後に若尾医師にがんと生きていくことが当たり前になった時代で大事なことを聞きました。 「がんはもちろん他の疾患にかかっている人、子育てや介護に従事している人など、それぞれの人がそれぞれの事情を抱えながらも自分らしく働ける、生きていけるのが多様性のある社会だと思います。そしてそんな社会を下支えするのは最新の正しい情報です。ネットにはさまざまな情報が溢れていますが、古い治療や保険外の高額な自由診療、科学的に効果が確認されていないものなど数多く存在します。 『がん情報サービス』はじめ相談支援センターなど正しい情報を検索したり、相談できたりする場所があるので、まずは知っていただいて利用していただければと思います」 参考 ※『がんになっても安心して働ける職場づくりガイドブック』(国立がん研究センター) 『がん情報サービス』/ https://ganjoho.jp 全国のがん相談支援センターを案内する相談窓口「がん情報サービスサポートセンター」 (ナビダイヤル0570-02-3410 平日10時から15時) ※この記事は、THE GOLD ONLINEとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
THE GOLD ONLINE編集部