急速に進む「ユーロ安」。裏にくすぶる円高圧力を探る…トランプ新政権で進むドル一極集中
今後の為替相場はどうなるのか
当面の米欧日の金融政策の方向を整理すると、アメリカはスローテンポでの利下げ、欧州は「ハイピッチでの利下げ」、日本は「極スローテンポでの利上げ」がそれぞれ予想される。ユーロ相場を中心に再整理すると、米欧間の金利差は急拡大するから、対ドルではユーロ安が進むことになる。一方で、対円では金利差が縮小するから、ユーロ安が進むだろう。 つまり、米欧日の通貨の強弱の順は、少なくとも当面の金融政策の方向からは、ドル>円>ユーロといった構図になると考えられる。もちろん、為替相場は金利差だけでは決まらないが、この構図を基に、2025年の主要通貨は取引がなされるのではないだろうか。問題は、さまざまなノイズが生じ、この振幅を拡大させる恐れがあることだ。 ノイズの筆頭は、やはりトランプ元大統領にあるといえる。自国第一主義を掲げるトランプ元大統領は、EUとの間で敵対することが多かった。米欧の関係はバイデン現民主党政権の下で正常化したが、トランプ元大統領が再登板することで、再び緊張を高めることになる。実際、EUが防衛費負担の増額などを求められる可能性は高い。 ウクライナ支援に関しても、アメリカは自らが手を引く代わりに、EUにさらなる負担を求めると予想される。こうした展開となれば、EU側の財政負担が増すため、ユーロの下押し要因となる。それ以外にも、トランプ元大統領は是々非々でEUに対して圧力をかけてくる。そのたびに、ユーロ相場には下振れ圧力がかかることになると予想される。 ロシアとウクライナの情勢が緊迫化し、欧州のエネルギー価格が再び急騰する事態もノイズとなる。インフレ圧力が高まるものの、経済が不振に陥っているため、ECBが利上げに転じることができるか定かではない。仮にECBが利上げを見送るようなことになれば、実質金利(金利─インフレ率)がマイナスとなり、ユーロ安を促すことになる。
ユーロ発の円高が生じる可能性
日本は良くも悪くも対米追従な側面が強いため、EUほどトランプ元大統領による圧力には晒されないだろう。ただし、トランプ元大統領は、貿易赤字を削減する魂胆から、基本的に「弱いドル」を志向する。トランプ大統領が日本の円安に対して批判を強めた場合、それを起点に投機的な「円売り圧力が逆転」する可能性(=円高に振れる可能性)には配慮した方がいいだろう。 いずれにせよ、ユーロが下振れした場合、円には上昇圧力がかかる。2025年はこのユーロ安発の円高が生じる展開に留意したいところだ。 なお中長期的な観点に立つなら、アメリカの財政赤字が解消されず、国債の発行が増える場合、いわゆる悪い金利上昇が意識されて、ドルに下落圧力がかかる可能性があることにも留意したいところでもある。 ※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です
土田 陽介