「韓国の高校生」に大きく負けている「日本の高校生」の読書率…調査から読み解く両国の読書の実態
韓国の文化体育観光部が2年に1度発表している「国民読書実態調査」が公表された。日本と比べるとおもしろいので見てみよう。 【マンガ】カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然…震えるほど感動して発した一言
中高年の急速な読書離れ
この調査で言う「総合読書率」(紙の本、電子ブック、オーディオブックを合わせた読書率)は成人が43.0%、小中高生は95.8%。 この10年くらいの成人の落ち込みが激しい。ただ「大人全体が急激に落ちている」わけではない。 内訳を見ると、20代と30代は微減傾向にはあるが、本を読む人の割合は7割程度を保っている。一方で40代はたった4年で6割から5割以下に、50代は45%前後から35%強に、60代は3割強から15%程度と、40代以上は10%~15%程度減っている。10年ほど前と比べると3割も本を読む人の割合が減っている。「中高年の本離れ」が急速に進行しているのだ。 年を取るほど本を読まなくなるのは日本をはじめ各国の読書調査でも見られる傾向で驚くべきことではないが、中高年の「本嫌い」の度合いや理由が国民読書実態調査では明らかにされている点が興味深い。 読書の好悪について聞いた項目を見ると、年齢が上がるほど「嫌い」と答える割合が増える傾向にある。小学生は「好きだ」44.1%、「普通」37.6%、「嫌いだ」21.5%なのに対して、60代は「好きだ」7.1%、「普通」32.2%、「嫌いだ」60.8%。 読書を阻害する要因を見ると、60代が本を読まない理由としてもっとも挙げているのは「視力が悪くて字がよく見えない」が最多で23.4%。40代以上になると30代以下と比べて「本を読む習慣がない」「本に面白みを感じない」「本を読むほどの心の余裕がない」「読書の必要を感じない」が増える傾向にある。 「読書は助けになると思うか」という項目でも、若いほうが「助けになる」と思う割合が多く、年を取るほど「助けにならない」と思う割合が増える。小中学生全体では「助けになる」77.4%、「普通」18.5%、「助けにならない」4.1%なのに対して、60代は「助けになる」51.3%、「普通」36.1%、「助けにならない」12.6%。 だんだん字が見えにくくなり、心に余裕もなく、感性が衰えたのか疲れているからなのか本に面白みも感じない、人生も後半戦になったので本を読んでまわりの話題についていくとか仕事に役立てるとかいう気持ちもなくなり、本を読んでも自分の救いになることもない、というわけで読まなくなる。 ただし、「高齢化すれば気力や視力が弱っていく」という一般論で片付けられる問題ではない。「今までもそうだった」のではなく、韓国では最近のほんの数年で40代以上は軒並み10~15%程度読書率を落としているからだ。しかも理由はスマホの普及といったことではなさそうだ(国民読書実態調査に掲載されている結果を素直に読んだだけでは、そう解釈するのは難しい)。一般的には2020年代初頭はコロナ禍によって巣ごもり需要が生じて本・読書は恩恵を受けていたはずなのだが、中高年の読書率は減退している。 韓国の社会や出版業界、書店業界に変化が起こっているのかもしれないし、コロナ禍で仕事を失ったり、うまくいかなくなったりして読書どころではなかった人が増えたのかもしれないが、本調査だけではその背景は判然としない。