全国和菓子甲子園で伊藤さんと庄司さんが優勝 安房拓心高(千葉県)
南房総市の安房拓心高校調理系列3年の伊藤千輝さん(旧千倉中出身)と庄司真理さん(館山中出身)のペアが、大阪府の辻調理師専門学校大阪校で行われた「第15回全国和菓子甲子園」(全国菓子工業組合連合会青年部主催)の決勝大会に出場。2人が考案した「食突(しょとつ)モ~進」が高く評価され、同校初の優勝に輝いた。 全国の高校生に和菓子に触れてもらい、創作和菓子で競い合うことで、日本の文化や郷土について理解を深めるとともに、将来の和菓子職人の発掘や和菓子文化を継承しようと続けられている大会。今年は「日本の酪農」をテーマに、全国から38校85作品の応募があり、書類審査を経て10校12作品が決勝大会に進出した。 2人は、調理系列に進んだ2年次から同じクラスに。伊藤さんが「器用で丁寧な庄司さんと、大ざっぱな私でいい感じになりそう」と庄司さんを誘ったのが出場のきっかけ。厚生労働省の「ものづくりマイスター制度」を利用し、5月から市内の和菓子店「盛栄堂」の長谷川浩司さん(42)の協力を受けて、試作を繰り返してきた。
「日本の酪農」をテーマに、牧場が身近にあることや同校の畜産系列で乳牛を飼育していることから、牧草などの飼料に着目してレシピを構想。畜産系列の友人との会話から、トウモロコシなどを配合した飼料も与えていると知り、トウモロコシを材料に盛り込んだ。 生地は「バイソングラス」という牧草を漬け込んだズブロッカリキュールで香り付けした口当たりが良い2色の時雨生地を使用。餡(あん)には、配合飼料に含まれるトウモロコシを入れ、生クリームと脱脂粉乳を加えてコクを出した「コーンクリーム羊羹(ようかん)」を使い、あんこが苦手な人でも食べやすくしたという。 デザインは牧草ロールをイメージ。生地に羊羹を塗って「の」の字に巻き、脱脂粉乳を使ったフォーク型のサブレを添えて仕上げた。食に対する情熱と目標に向かって突き進む姿勢を表現しようと、「猪突猛進」という四字熟語をアレンジし、「食突モ~進」と名付けた。 決勝大会では、制限時間105分の調理実演と3分間のプレゼンテーションを通して、製品力、技術力、ネーミング・企画力、プレゼンテーション力などを審査。味と見た目のバランスをはじめ、牧草をテーマにした着眼点や作業姿勢などが高く評価され、「完成度が高く、非の打ちどころがない」と審査員をうならせた。 同校としては、4度目の決勝進出。昨年準優勝だった先輩たちから託された思いを背に念願の優勝をつかみ取った。 伊藤さんは「餡の水分を飛ばし過ぎていないか心配だったけど、優勝できてすごくうれしい」。庄司さんは「たくさん練習した成果が出せた。調理もプレゼンも緊張したけど楽しかった」と笑顔で話していた。 長谷川さんは「和菓子を知ることからスタートしたが、仕上がった作品は完成度が非常に高かった。優勝の知らせには、うれしくて涙がこぼれた。先輩の思いに応えようという気持ちと、大会にエントリーしたもう1組とのライバル関係が優勝を導いたのでは」と2人の成長と活躍に目を細めていた。