SNSでの社会的弱者バッシングが横行する4つの理由…「自分よりダメな人を叩けば“溜飲”が下がりますか?」
『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』#2
“優しい人”について精神科医の視点から説いた新刊『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』。社会的弱者バッシングなどが横行するようなギスギスした社会ではどう生き抜けばいいのか? 【画像】ネット上に氾濫する過激な批判
書籍より一部抜粋、再編集してお届けする。
自分の心の中にある「歪み」 の存在を知る
現在の日本は、長引く不況や経済格差の拡大などによって、社会全体がギスギスしている状態にあります。 「自分が生活するだけで手一杯」という人が増えたことで、 周囲の人たちに気を配るだけの精神的な余裕がどんどん失われているように感じます。 私が最も関心を寄せているのは、不景気が長く続いたことによって、格差社会の「歪み(ひずみ)」が急速に広がっていることです。 その象徴といえるのが、「生活保護バッシング」や「精神障害者差別」など、いわゆる社会的弱者に対する「理由なき攻撃」です。 大地震や集中豪雨の被害者には深く同情できる人たちが、生活保護を受けている人や、精神障害がある人には、厳しい批判の目を向けているのです。 こうした現象の背景には、無記名、無責任に自分の意見を発信できるSNSの普及が大きく関係していますが、精神科医としては、「なぜ、人はこんな行動をしてしまうのか?」という心の問題に注目しています。 優しい人であるためには、自分の心の中にある「歪み」の存在を認識して、それを修正する必要があります。
「社会的弱者バッシング」が横行する四つの理由
インターネット上には、生活保護バッシングや精神障害者差別など、社会的弱者に対する過激な批判が氾濫しています。 本来であれば、社会的弱者は、地域社会全体で優しく庇護すべき対象です。温かい目で見守ることはあっても、目に余るような罵詈雑言を浴びせるような相手ではないはずです。 なぜ、こんな現象が横行しているのでしょうか? その背景には、次のような四つの理由をあげることができます。 【理由①】自分よりダメな人を叩いて「溜飲」を下げている 一番の理由は、自分よりダメだなと思う人を見つけて、それを罵倒することで「憂さ晴らし」をしているのです。 「自分の方がマシだな」と感じることで、ささやかな優越感を持つことができれば、その瞬間だけでも、自分の置かれた苦しい状況を忘れることができます。 生活保護バッシングには、国から生活費を支給されることに対する嫉妬も多分に含まれています。 「アイツより自分の方がマシだな」という発想をしていると、 人との比較でしか自分 のことが考えられなくなり、つねに自分より下の人を探し続けることになります。 延々とバッシングが繰り返される原因は、そこにあります。 人との比較で溜飲を下げる行為は、自分を「みじめ」にするだけです。 みじめな思いをしているから、自分のバッシングが余計に過激化している……ということに、早く気づく必要があります。 【理由②】弱者に対する「想像力」が欠けている 名前も顔も知らない社会的弱者を、平気で叩けるというのは、相手に対する想像力が決定的に欠けていることも大きな原因です。 「能力的に劣っているからだろう」と自分勝手に結論づけて、 社会的弱者が抱える事情までは考えが及んでいないのです。 社会的弱者には、それぞれ異なった事情があります。 病気やケガで仕事が続けられず、仕方なく生活保護を受けている人もいれば、貯蓄がないために生活が破綻してしまった高齢者もいます。 それを一括りにして、「どうぜダメなヤツなんだろう」と決めつけて一斉にバッシングするのは、相手に対する想像力が欠如している証拠です。