カスハラ防止に向けた協議始まる 従業員の46%「仕事に対する意欲が減退」
顧客から理不尽な要求や悪質なクレームを突きつけられる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の防止に向けて、愛知県は13日、経済、労働者団体の代表や有識者らによる防止協議会を設立した。カスハラが社会問題となる中、県は条例制定を視野に入れているが、罰則を含めた防止対策の実効性を担保することなどが課題になっており、協議会での議論が注目される。(乙部修平) カスハラは一般的に、顧客や取引先からの暴力や悪質なクレームなどの著しい迷惑行為とされる。職場の業務に大きな影響が出ることから、社会問題となっており、全国の自治体で条例化に向けた動きが出ている。 厚生労働省の2023年度の調査によると、「過去3年間に顧客などからの著しい迷惑行為を受けた」と回答した企業の従業員は約11%、「従業員からの相談を受けた」とした企業は約28%だった。また迷惑行為の内容としては、「執拗なクレーム」「大声などでの威圧」「暴言など」が多かった。さらに迷惑行為を受けた従業員の約46%が「仕事に対する意欲が減退した」としている。 民間だけにとどまらず、全日本自治団体労働組合が20年に全国の自治体や病院、公共交通機関などに行った調査では、46%の職員が「過去3年間で住民からの迷惑行為や悪質クレームを受けた」と答えた。 県はこれまで、企業向けの対策講座を開くなどしてきたが、労働者団体などからの要請もあり、県の取り組みとしてカスハラ防止を推進するため、協議会を設置した。この日の協議会の初会合では、出席者がカスハラ行為について整理を行った。その中で、社会的な迷惑行為であることの確認や小規模事業者に対する対応などを求める声が上がった。 協議会では条例で罰則を設けることも議論されるが、先行して条例化を進めている東京都では、悪質な行為は強要罪などで処罰可能なことなどから罰則を設けない方針だ。設けるには、カスハラに該当する行為を明確化する必要があり、会合でも定義付けを確認する意見があった。9月に2回目が予定されており、今後、条例や付随する罰則、罰則以外の有効な抑止策などについて議論を深めていく。会合に出席した大村秀章知事は「労働者が安心して働ける環境を作るために、取り組みを一層推進する必要がある」と話した。