中村莟玉の一番の“やる気スイッチ”とは? 人気漫画『応天の門』の舞台で見せる「ひと味違う顔」
中村梅玉が率いる高砂屋一門の魅力
――これまで出演されてきた作品で、学びを得たことが実感できたエピソードがあれば教えてください。 毎度、舞台に立たせていただくたびに学ばせていただいていますが、2024年2月に御園座で『三人吉三巴白浪』のお嬢吉三とお坊吉三を勤めさせていただいたことで、歌舞伎作品の主役というものを初経験させていただきました。いわゆる芯のお役として舞台の真ん中に立ったときに見える景色は違うものなのだと思いました。 特にお嬢吉三はお坊吉三が出てくるまでの“間”というものが自分次第で、その感覚が気持ちよくもあり、孤独でもありました。お嬢吉三を演じる先輩を拝見して、“格好いい”と思っていたのは、この孤独を背負っている瞬間が格好いいのだろうなと思いながら演じました。 ――時間を忘れるほど、夢中になれることはありますか? 僕は結構時間を忘れがちでして、芝居のことを考える時は、大概時間を忘れています(笑)。それこそ映画を見たり、本を読んだり、パンダを見たり、どれも気がついたら時間が経っていることばっかりです。僕の人生はずっとこういう感じなのですが、癒しということでいえば、家の中でできることが好きですね。 今はシャンシャンが中国にいるので、“今日のシャンシャンはこんな感じだった”という動画をチェックしています(笑)。気がついたら数時間経ってしまって……。ネットの海へこぎ出してしまうと、なかなか戻ってこられない。だいぶ時間が溶けています(笑)。 ――莟玉さんがこれからの人生で目指している目標としてどんなことを抱いていますか? 父(中村梅玉)が率いる高砂屋一門は、父がおおらかなタイプなので、まったり、ふんわりしていて、それが僕らの家の魅力だと思っています。ここで育てていただいたからこそ今の自分があると思いますが、時間を忘れがちな僕は意識的に危機感を持っていなければ行動に移せないとも考えています。 具体的には僕自身のことというよりは、父が元気で、父の目が届くうちに、一門の中で整備しておくべきことをきちっとしておきたいです。また、「高砂会」のような一門全体で取り組む勉強会にも引き続き挑戦していきたいです。「高砂会」を開催したことで、歌舞伎界全体を応援してくださっているお客様が、我々高砂屋一門にはどんなことを求めてくださっているのかがくっきりと浮かび上がったような気がしました。父がいるうちに回数を重ねて深めていきたいです。 今はチャンスがある限り、いろいろなことに挑戦させていただいて、最終的には、父に“あいつにあのとき冒険をさせてみてよかった”と思ってもらえるような成果を出す。その思いが僕にとって大きな原動力になっていますし、1番の“やる気スイッチ”なっているのかなと感じています。 中村莟玉(なかむら・かんぎょく) 1996年9月12日生まれ東京都出身。2004年3月中村梅玉に入門、2019年に中村莟玉と改名し、梅玉の養子となる。女方、そして立役も勤め、将来の歌舞伎界を担うと期待されている。古典歌舞伎はもちろん、新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』新作歌舞伎 『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』などにも意欲的に取り組む。明治座には朗読劇『細雪』以来の出演となる。
山下シオン