祖国スペインへの愛を込めて。“ピアノの女王”ラローチャによる名演を聞く【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
グラナドス『スペイン舞曲集』 名ピアニストが描き出したスペイン情緒
今日5月23日は、スペインの名ピアニスト、アリシア・デ・ラローチャ(1923~2009)の誕生日です。 スペインのカタルーニャ州バルセロナの音楽一家に生まれたラローチャは、5歳にしてバルセロナ万国博覧会で初舞台を踏み、翌年カタルーニャ音楽堂において、ベートーヴェン、グラナドス&シューマンのプログラムでデビューするという、圧倒的な神童ぶりを発揮します。その後も順調にキャリアを積んだラローチャは“ピアノの女王”、“スペイン史上最大のピアニスト”と呼ばれる存在となったのです。 幅広いレパートリーを誇ったラローチャにとって、祖国スペインの音楽は特別だったのでしょう。中でも彼女が「真のロマン派の雰囲気を捉えた唯一の作曲家」と表現したグラナドス(1867~1916)への思いは格別だったようです。 スペインの民謡や舞曲の要素を取り入れたグラナドスの代表作『スペイン舞曲集』の名演からは、ラローチャが愛してやまないスペイン情緒が匂い立つようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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