パナソニック楠見CEO、Anthropicとの提携は「明確な選択肢」--12年ぶりCES基調講演
Panasonic Wellが提供する家族を助けるサービス「Umi」 Panasonic Goによって、AI活用を推進するもう一つの柱が、今回の基調講演で新たに発表した「Umi」である。デジタルファミリーウェルネスサービスと位置づけるUmiは、2025年から米国でサービス提供を開始。AIエージェントなどの技術を活用し、ウェルネスデータを基に、それぞれの家族に合わせた具体的な行動計画に落とし込み、健康的な習慣を構築し、家族全員が同じ目標に向かって取り組めるようにするという。 Umiを提供するPanasonic Well CEOの松岡陽子(Yoky Matsuoka)氏は、「AIを搭載したファミリーウェルネスコーチとしての役割を果たし、家族のケア、調整、つながりをサポートする。Umiに話しかけるだけで、離れた場所に住む家族の様子を確認できたり、家族との週末のスケジュールを調整したり、食事のデリバリーを頼んだりといったことを任せることができる」という。 松岡氏自身、パナソニックグループでの役員としての役割に加えて、妻であり、4人の子供の母親であり、日本に住む両親の世話をしている唯一の子供であるという状況にある。さらに、2匹の犬の世話をし、おしゃべりなインコを飼育し、200ポンドのペットの豚も飼っているという。 「美しくも、混沌(こんとん)とした家庭の中で暮らしている。これは、多くの家庭と同じである」とし、Umiの初期バージョンを使用して、両親をサポートした結果、「私の家族にとって、Umiはゲームチェンジャーであった」と自己評価。「高齢の親の世話をしながら子供を育てる『サンドイッチ世代』の家族が待ち望んでいたサービスになる」と述べた。 楠見氏は、パソナニックグループが、Blue Yonderの子会社化や、Panasonic Wellへの投資、AIのグループ内活用の拡大に向けたプラットフォームの開発など、北米市場において100億ドル以上の投資を行ってきたことを明らかにする。 「Panasonic Goは、パナソニックグループのビジネス変革を推進し、グローバルのお客さまやパートナーに、新しい体験を創造する成長イニシアティブである。これは、ゼロから始めるわけではなく、すでに北米だけで100億ドル以上の投資をしている。くらしの領域では、毎日10億人以上がパナソニックグループの製品を利用している。これまでの投資は、次の10億人のお客さまに、サービスを提供するための新しい可能性を生み出すAIオーケストレーションとサービスプラットフォームになる」と位置づけた。 「Claude」を展開するAnthropicと提携 今回の基調講演では、もう一つ大きな発表を行った。それは、AIモデルベンダー大手のAnthropicとのグローバルな戦略的提携の発表である。 パナソニックグループは、AnthropicのAIアシスタント「Claude」をグローバルで活用することを発表。その第1弾として、Umiに採用する。将来的には、パナソニックグループの製品が接点を持つ10億人の顧客に対して、パーソナライズしたサービスの提供が可能になるという。 楠見氏は、「パナソニックグループが培ってきた信頼に根差した最先端ソリューションを、Panasonic Goを通じて提供するためには、ベストなAIを採用し、倫理的なAIを、全ての業務に組み込む必要があった。そのときの明確な選択肢はAnthropicしかなかった。ビジネスの未来を形作るために不可欠な存在である」と述べた。 Anthropicの共同創業者であるDaniela Amodei氏は、「Anthropicは、AIを安全で、理解しやすく、人間の価値観と深く調和するように設計している。倫理に基づいたAIを、Panasonic Goに導入できる。Claudeは、パーソナライズされた顧客との接点に対して、大規模に展開することで、人間中心のAIによって、次世代の顧客体験を強化することができる。また、生産性の向上とインテリジェントな意思決定をサポートすることによって、職場の効率性を変革できる」と述べた。 それに対して、Panasonic Wellの松岡氏は、「Panasonic Goでは、ビジネス全体でClaudeを活用するために、さらに大きな計画を持っている。2025年中には、もっと多くのことを共有できる」とし、今後、Anthropicとのパートナーシップの枠を拡大していく姿勢を示した。 今回のPanasonic Goの発表は、パナソニックグループが、AIを中心とした企業に変革することを、明確に示すものになった。その方向性に間違いはなさそうだ。あとは実行力の問題である。AIを武器に、継続的な成長を維持する企業に、短期間で転換できるかどうかが鍵になる。パナソニックグループにとっては、そこが課題となる。