USスチールの買収は本当に日本製鉄のプラスになるのか~もはや電炉の時代なのに
USスチールは歓迎しているが
日本製鉄がUSスチール買収に動き始めたとの発表 (参照:日本製鉄HP 昨年12月18日「米国 United States Steel Corporation の買収について」)は世間をにぎわせた。 【写真】バイデン政権、「同盟国」日本企業のUSスチール買収に難色 日本製鉄がどのような意図で、どのような目的をもって買収を行おうとしているのかについては、同「USスチールの買収について」で詳細に語られている。 そして、ジェトロ 4月15日「米USスチール、臨時株主総会で日本製鉄による買収計画を承認」と伝えられるように、被買収側のUSスチール(株主、経営陣)も「歓迎」しているようである。 一見、大きな問題は無く、スムーズに交渉が進むかのように見えたのだが、早速米国政府から「物言い」がついた。 日本政府は「ジャイアン・アメリカ」に対して「平身低頭」であるから、これは大きな痛手だ。 さらに、NRI 3月22日「バイデン米大統領が日本製鉄のUSスチール買収に否定的な姿勢を示す:大統領選挙に翻弄される買収計画」のように、敗色が濃厚なバイデン氏の「大統領選挙対策」の色彩が強く感じられるだけではない。民主党のみならず、トランプ前大統領を始めとする共和党議員も反対の立場を表明している。 その上、日本経済新聞 3月19日「米鉄鋼労組会長、日鉄のUSスチール買収巡り反対姿勢強調」のように労働組合も反対の立場をとっている。 しかも、買収阻止に向けたロビー活動を積極的に行っているのが、昨年、USスチール買収で日本製鉄が提示した買収額に競り負けた米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスとされる。 実際、会社四季報ONLINE 5月22日「USスチール、競合クリフスが日鉄の買収に妨害工作と非難」と報道された。 このような「妨害(工作)」の結果、Bloomberg 5月3日「USスチール、日本製鉄による買収完了時期の見通しを先送り」となっているのが現状だ。