候補は民主党? 自民党? 北九州市長選で話題の政界「相乗り」「鞍替え」事情
北九州市長選挙(来年1月25日投開票)が、にわかに注目を集めています。3選を目指す現職の北橋健治氏は10月22日に正式に立候補表明したのですが、元民主党衆院議員の北橋氏は自民党から単独で推薦を受けることになったからです。いったい、民主党? 自民党? 「政界渡り鳥」という言葉が古くからあるように、政治家が所属政党を移り変わる事例は決して少なくありませんが、これを機に昨今の「鞍替え事情」を覗いてみました。 北橋氏は衆院議員を6期務めた後、2007年に北九州市長選に民主・社民・国民新の推薦で出馬(無所属)。政権与党だった自民・公明推薦の元国土交通省官僚を破り、北九州市で40数年ぶりの「非自民」系市長となりました。 来年の市長選に向けた「自民単独推薦」は、自民党北九州市議団の意向が大きかったようです。地元紙関係者などによると、北橋氏は特に2期目以降、自民党と良好な関係を築いてきました。前回の2期目選挙で自民党が独自候補を立てなかったのも、「北橋市民党」に乗っかり、自民党の要求を飲ませていく方が得策との判断が働いたからだ、と言われます。 これに対し、同じ福岡県で絶大な力を誇る自民党副総理の麻生太郎財務相はこの夏、「ここままではいけない。独自候補を立てろ」と大号令を発しましたが、地元市議団らの意向は変わらないままでした。党中央が無理に単独候補の擁立を進めても、地元が動かなければ選挙に勝つことはできません。そうしたことから、「不戦敗を嫌った自民党」と「オール与党体制を作りたい北橋氏」の思惑が一致し、今回の「自民党単独推薦」に至ったようです。
政党の対立軸があいまいになり、政策の境目が溶解する現象は、今に始まったことではありません。 1980年代に冷戦が終わると、日本国内の冷戦構造も崩れました。かつて、自民党への対抗政党だった社会党は社民党に姿を変え、一大勢力を誇った時代の面影はありません。それと並行して小選挙区制導入など一連の「政治改革」が進み、イデオロギー対立ではなく、真の意味での政策本位の政治が始まるのではないか、と期待されました。 ところが、多くの識者が指摘するように、日本政界ではその後もなかなか本格的な政策論争が行われず、非自民の各党は離合集散を繰り返しています。「日本の政党は選挙互助会」と言われるゆえんです。 実際、今回の北九州市長選に見られるような「相乗り候補」は、地方選挙において数えきれないほどの例があります。今年4月に4選を果たした山田啓二京都府知事は、公明・自民・民主府連・日本維新の会府総支部が推薦する典型的な「相乗り」でした。8月の長野知事選でも、自民・民主・公明・結い・社民の推薦を受けた候補が当選しています。知事に限らず、市長選レベルになると、「オール与党」「市民党・県民党」をうたう相乗り候補はさらに多く、対立候補は共産党だけという例も少なくありません。