米大統領選 復活したバイデン×サンダースの一騎打ちはどう決着する?
秋のアメリカ大統領選に向けた民主党の指名候補争いは、現地時間の3月10日に、ミシガン州など6州で予備選・党員集会がある「ミニ・スーパーチューズデー」を控えます。「スーパーチューズデー」という大きなヤマ場を越えた指名候補争いは、バイデン氏とサンダース氏による戦いがいつまで続くのか。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授は、このまま一騎打ちが続いて夏の全国党大会までもつれれば、バイデン氏に有利なシナリオが待っていると指摘します。前嶋氏に寄稿してもらいました。 【図解】米大統領選 指名争いのヤマ場「スーパーチューズデー」3つのポイント
◇ 3月3日のスーパーチューズデーは「バイデンの復活」という一言で要約されるだろう。民主党の指名候補争いは、バイデンとサンダースの一騎打ちとなった。今後、どのようにこの戦いが決着するのか、展望してみたい。
完全に潮目が変わったスーパーチューズデー
まるで「本命視」されていた1月ごろの世論調査の段階に戻った感じである。メディアも世論も大きく注目し、その後の予備選を勝ち抜くには落とせないアイオワ州党員集会で、バイデンは大きく躓いた。この2月3日のアイオワ州党員集会、続く同11日のニューハンプシャー州予備選で、それぞれ4位、5位とまさかの体たらくだった。同22日のネバダ州党員集会ではかろうじて2位だったが、当時は原稿を棒読みする覇気のない演説が続き、一時は「撤退寸前」とみられた。 ただ、2月29日のサウスカロライナ州予備選でバイデンは一気に復活する。その背景にはアフリカ系からの厚い支持もあったが、国民皆保険や教育ローン返済免除などを訴えるサンダースの急進左派的な政策には夢があるものの、それを中道派が警戒し、その実現性は不透明ということで、民主党内の危機感が強まったのも大きな要因だ。この戦いでバイデンが初めて1位となり、「復活」の土壌となった。その流れの中で3月3日のスーパーチューズデーに突入し、14州中、10州でバイデンは1位を占めた。
まだ「4回の表」? あと「5回しかない」?
大統領候補の党指名を勝ち取るためには、州ごとに割り振られた「代議員」の数をより多く獲得しなければならない。ただ、スーパーチューズデーを終えた時点で、その対象となった代議員の数は約1500であり、総数3979の約40%の分配が終わったに過ぎない。野球にたとえれば「まだ、4回の表」くらいだ。ここまでの代議員獲得数はバイデンが約640、サンダースは約560で、差は80しかない。民主党の場合、各州での獲得代議員は勝者総取りではなく、得票に応じた比例配分になる。さらに比例配分する際、州全部で割り当てる分と、その州の下院議員選挙区で勝利した場合に配分される代議員もいて、さらに票が割れる。バイデンに「勢い」が増しても、一人勝ちを続けられるわけではない。 数字を見て冷静に考えれば、サンダースにもまだまだ逆転する機会はある。 ただ、こうした数字以上にサンダースが追い込まれている状況は深刻かもしれない。というのも、このままバイデンとサンダースの一騎打ちが続き、予備選結果を確認する夏の全国党大会まで勝負がつかない場合、バイデンに極めて有利な展開が予想されるためである。実際には「あと5回しかない」「最後に無敵のクローザーが立ちはだかる」という状況にサンダースは直面している。