アルカイダかISか 宗派は? 林立するイスラム過激派を分類
(3)グローバルとローカル
イスラム過激派は、もともとローカルな組織として生まれたものがほとんどです。その中には、タリバンのように自国の政府を打倒し、その国境の中でイスラム国家の樹立を目指すタイプ、アル・シャバーブのように一国のなかの一部を実効的に支配しようとするタイプ、ヒズボラのように隣国イスラエルに攻撃を続けるタイプ、などがあります。 しかし、アルカイダの傘下に収まる組織には、グローバル・ジハードの旗印のもと、欧米諸国でのテロ活動を行うものが少なくありません。2015年1月に発生したフランスの新聞社シャルリ・エブドの襲撃事件でAQAPが犯行声明を出したことは、その典型です。 とはいえ、欧米諸国ではテロへの警戒が厳しくなっており、さらに米軍の掃討作戦などによってアルカイダがグローバルにテロ活動を展開するだけの力を低下させています。その一方で、先述のように、ISは「イスラム国家の樹立とその領土拡張」を主な活動方針にしています。その結果、アルカイダ系とIS系、さらに宗派を問わず、イスラム圏やそれに隣接する地域で、勢力圏を広げるためのテロ活動が激しさを増しています。それは、これまで以上にイスラム過激派同士の接触頻度が高まることを意味します。そのため、従来はあまりみられなかったイスラム過激派同士の衝突が、今後ますます増えることが予想されるのです。 (国際政治学者・六辻彰二)
------------------------------------------------------ ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬社)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo! ニュース個人オーサー。個人ウェブサイト