実力派芸人たちが即興でミラクル連発…『THEゴールデンコンビ』刺激的現場を成立させた“職人”たちの舞台裏
■1日かけた前日リハーサルで混乱を味わう 順番も回数も決めず、200人の観客を前にしたステージで、即興ネタがノンストップで繰り出されていく――プレイヤーの芸人たちにとってこの刺激的なフォーマットは、橋本氏らがこれまで仕事をしてきた百戦錬磨のスタッフ陣なくして成立しなかった。 出番の整理や、直前に聞いた明転・暗転のきっかけの伝達だけでなく、突飛な発想をする芸人が求める小道具の手配、さらにはネタがかぶって「練り直したいです!」と希望した際などの対応力も問われるが、これをライブ形式で一切止めることなく進行できたのは、橋本氏が立ち上げ、即興ネタをレギュラーで展開する『有吉の壁』(日本テレビ)をはじめとする「お笑いに関して情熱と確実な腕があるスタッフのドリームチーム」だからこそ。 それでも、前日に1日かけてリハーサルを実施。若手芸人8組に、本番と同じお題でネタを披露してもらい、「どうやってネタ順を整理するのかという混乱を前の日に味わって、本番のイメージをみんなが頭の中にできた状態で臨むことができました」と、シミュレーションを行っていた。 前日にも、制作チームの打ち合わせを4時間にわたって実施。出演者が急にトイレに行きたくなったら3階建てのセットでどう誘導するか、長時間の収録で観客が疲れたらどうするか…といった部分まで、「微に入り細に入り考えられることを全部想定して、100人のスタッフで、誰がいつどういう動きをするのかを全部詰めていきました」という。ここは、過去に総合演出を担当した『24時間テレビ』(日本テレビ)のノウハウも生かされていた。
テレ朝出身プロデューサーと“ゴールデンコンビ”
今回の番組において、橋本氏は「企画・演出」という立場だが、テレビ朝日出身のAmazon MGMスタジオのプロデューサーとともに、制作の指揮を執った。かつては『有吉の壁』(日テレ)と『あいつ今何してる?』(テレ朝)という水曜19時に真裏同士で戦ってきた2人が、裏方として“ゴールデンコンビ”を組んだ形だ。 「とんでもない予算をかけてすごい規模の配信のバラエティをやるとなると、演者さんだけでなく、美術、衣装、技術、主題歌、また編集においてもタッチや加工の色味、CGをどう作っていくかなど、やらなければいけないことがとんでもない量あるんです。それでも、細部まで詰めることが必要な時に2人で分担することで、気持ち的にもだいぶ楽になれました。 配信で大きなコンテンツをやる時はこういう作り方をすることが増えていて、やっぱり1人が抱えきれない量を持つより、それぞれの強みを最大限に掛け算しながらコンテンツの強度を上げていくほうがいいと思うんです。地上波でもドラマは分業が進んでいますが、バラエティは1人の演出家に権限が集中しがち。それゆえに思い描いたコンテンツがしっかりできるという良さもあるのですが、やっぱりグローバルに向けて見たことのないバラエティを作ろうとなると、個々が自分の限界を突破して表現に挑戦し、その化学反応でコンテンツを作ることが大事だと思うので、今回彼と一緒にやれたことは僕の中でめちゃくちゃ財産になっています」 ■収録5か月前のスケジュール確定で豪華メンバー実現 MCの千鳥をはじめ、「高比良くるま(令和ロマン ※「高」は正しくははしご高)&野田クリスタル(マヂカルラブリー)」「せいや(霜降り明星)&秋山寛貴(ハナコ)」「堀内健(ネプチューン)&屋敷裕政(ニューヨーク)」「長田庄平(チョコレートプラネット)&じろう(シソンヌ)」「澤部佑(ハライチ)&真栄田賢(スリムクラブ)」「平井まさあき(男性ブランコ)&堂前透(ロングコートダディ)」「サーヤ(ラランド)&KAZMA (しずる ※「Z」は正しくはストローク付きのZ)」「津田篤宏(ダイアン)&永野」というこれだけの売れっ子芸人たちが一堂に会したのは、収録の5か月前にスケジュールを確定させたことで実現。これも、配信ならではの制作スタイルの賜物だ。 「テレビのバラエティの収録で“5か月後のこの日、空いてますか?”なんてことはあり得ないです。むしろ“来週空いてますか?”みたいな世界で、それによって今話題の人に出てもらえるという良さもあるんですが、これだけ時間をかけることで“本当に見たい人たち”がそろうということを改めて感じました」 その上、全組が既存のコンビやトリオから1人ずつ代表して出場する形に。ここは、「チョコプラだと松尾(駿)さんにも出てほしいし、シソンヌの長谷川(忍)さんも出てきたら面白くなるのは見えるのですが、それをやってしまうと分かれたコンビがお互いのネタをどう見るのか、ということもお客さんが気になってくるし、そこでネタの“かぶせ”ができてしまうかもしれない。なので、1回目としてフレームを分かりやすくする上で、シンプルに1人しか出ないということにしました」と意識した。