「こども誰でも通園制度」は本当に子どものため? 1カ月で10時間だけ 毎回「はじめまして」で泣いて終わる現実 保育士の負担軽減は先送り 「自治体ガチャ」の不公平感
■「待機児童が10分の1に減少」の背景にあるものは…
近年で一番、待機児童が多かったのは、平成29年(2017年)4月。2万6千人いました。それが令和5年(2023年)4月は2600人。わずか6年で10分の1に減少したのです。待機児童の問題は国を挙げての政策だったので、こうして成果が出たのは素晴らしいことです。大きなが課題が達成できました。 しかし、待機児童の減少というのは、すなわち「保育ニーズの低下」でもあります。出生数は8年連続で「過去最少」を更新し続けています。国立社会保障・人口問題研究所の予測では、想定より10年以上早く少子化が進行しているといいます。 実際、定員割れの保育園も出てきています。そして、ここに、「こども誰でも通園制度」がピタリとはまるように思えるのです。反対に言うと、待機児童がたくさんいる時には、こんな制度はできません。保育施設の管理運営の枠が空いている所をパズル的に埋めていく…そういう風にも見えてしまいます。 保育の管理運営の立場の方にとっては、待機児童の減少=保育人数の低下で、これから競争が始まってくる。子どもの奪い合いです。定員が割れてくる中で、「こども誰でも通園制度」をやらない選択肢がなくなってくるのではないでしょうか。 そうは言っても、現実は計算通りにはいきません。1人の保育士さんが面倒を見る子どもの数は、数字の上では減ってくるかもしれませんが、仮に6人が5人になったとして、数字上と同じだけ楽になるでしょうか。(計算上の)楽になった分量で、新たな子どもの受け入れができるでしょうか。ただでさえ保育の現場は忙しく、人手も足りていません。私は保育士研修で多くの保育士さんと関わる機会がありますが、この制度について「もろ手を挙げて賛成」という話はなかなか聞きません。保育士さんにしてみれば、「私たち、まだこんな大変なことをしなければいけないのでしょうか」というのが本音でしょう。
■保育所を活用するというより、まったく新しい仕組みを作る
(Q.未就園児をサポートするためには、どうすれば良いとお考えでしょうか?) なんでもかんでも保育所、保育士頼みにするのではなく、もう少し違う形の子育て支援制度を充実させると良いと思います。 例えばですが、「子育て支援員」という資格が、平成27年にできました。保育士が国家資格なのに対し、子育て支援員は都道府県や市町村等から認定を受ける民間資格です。規定の研修を受けると、様々な保育施設に入って、保育士のサポートが出来ます。クラスを持って担任として働くことはありませんが、例えば、子どもたちとお散歩に行ったり、食事のお世話や排せつの介助をしたり、子育てに悩んでいる保護者の方へアドバイスをしたりすることができます。 そういった資格を持つ人を活かせるような、まったく新しい仕組みを作るぐらいの気構えが必要ではないでしょうか。