中国経済への大打撃は不可避…「世界最大の貿易国」の根幹だった台湾企業が相次いで脱中国を決めた背景
中国の「貿易」は台湾という外資に支えられている。たとえば「輸出金額トップ10企業」のうち6社は台湾企業で、中国本土の企業は4社に過ぎない。そんな台湾企業の中国脱出が増えつつある。なにが起きているのか。ジャーナリストの邱海涛さんの著書『中国の台湾武力統一が始まる』(徳間書店)より一部をお届けする――。(第1回) 【この記事の画像を見る】 ■中国で稼いでいる「両面人」 中国本土の人々が中台経済問題について話すとき、「両面人」という言葉をよく使う。 これは中国本土で大きく稼ぎつつ、台湾独立を支持して中台統一を妨害しようとする二面性をもつ台湾の商人を指す。 このような「両面人」は決して少なくなく、中国本土では重要な経済投資を考慮しつつ、これらの人物への対応に頭を悩ませている。 たとえば、台湾3大工業グループの一つ、遠東グループの創始者である徐有庠(じょゆうしょう)と息子の徐旭東(じょきょくとう)は典型的な「両面人」と見なされている。 徐有庠は江蘇省の生まれで、1949年、国民党が台湾に撤退した際、資産をもって台湾へ渡った。台湾で遠東グループを設立し、紡績、エネルギー、化学製品、建材、金融、電信など多岐にわたる分野で事業を展開し、現在では大手企業グループの地位を確立している。 ■台湾独立を目指す民進党支持に転じている 財を成した徐有庠は、国民党政権を支持し、多額の政治資金を提供してきた。 徐有庠は2000年に死去したが、会社の経営を受け継いだ息子の徐旭東はのちに台湾独立を目指す民進党支持に転じ、2020年には32人の民進党候補者に合計4100万台湾ドルの政治資金を提供したと報じられている。
■中国で嫌われている民進党 民進党は中国本土でもっとも嫌われている。 人前で冗談でも「民進党にも良い点がある」などと言ったら、売国奴と見なされるほどだ。 2021年11月、台湾遠東グループの中国法人に、行政管理部門から5億元近い罰金が科された。その理由として、経営上の不正があったとされるが、台湾では、中国政府による圧力だという声も少なくない。 ■「輸出金額トップ10企業」のうち6社は台湾企業 いうまでもないが、中国は世界最大の貿易国だ。 WTOによれば、2021年の中国の輸出入総額は6兆510億ドルで、アメリカを29%上回り、日本の4倍にもなる強さを示している。 だが、この結果には中国本土の台湾企業が大きく貢献している。 2020年の中国の対外貿易輸出金額ランキングでは、上位10社のうち、フォックスコン、ASUS、クアンタ・コンピュータなど6社が台湾企業で、残り4社はファーウェイ、中国石油天然ガス集団有限公司などの中国本土系企業だった。 つまり、10位の半数以上が台湾企業なのだ。 輸出金額ランキング100位では、台湾企業の存在が一層際立つ。前記の企業に加え、英業達、仁宝など、全体の3分の1に相当する31社が台湾企業なのである。