英1部・ブライトンほか14チームが参戦…「来日バブル」の裏にある海外名門クラブの“脱・中国路線”
海外の主要サッカーリーグのオフシーズンにあたるこの時期は、日本人にとって世界のトッププレイヤーを間近に観られるチャンスとなっている。 【画像】すごい…!日本代表FW・三苫薫「愛妻とのラブラブツーショット」風景 昨年はマンチェスター・シティ(イングランド)を皮切りに、パリ・サンジェルマン(フランス)、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)といったビッグクラブが来日し、日本のサッカーファンを喜ばせた。今年は去年より多い14チーム(※数字は6月18日時点)が来日し、Jクラブと対戦することになっている。かつて香川真司(35)が所属し、今季のCL(欧州チャンピオンズリーグ)で決勝進出を果たしたドルトムント(ドイツ)や、三笘薫(27)が所属するブライトン(イングランド)など、日本人にとって馴染み深いラインナップ。5月29日に国立競技場で開催されたレアル・ソシエダと東京ヴェルディの一戦は、久保建英(23)の凱旋試合ということもあり、4万人もの観衆が集まった。 実は数年前まで、欧州のクラブがオフに遠征していたのは中国だった。だが、ある出来事を境にそんな風景が一変した。欧州クラブと日本を繋ぐエージェント会社の幹部は「今夏、14ものクラブが日本を訪れることになったキッカケは中国で起きた“メッシクライシス”です」と打ち明ける。 「今年2月、リオネル・メッシ(37)擁するインテル・マイアミが香港で親善試合を行ったのですが、肝心のメッシは欠場。ところが、その3日後に日本で行われた親善試合には出場した。これに中国人たちが激怒し、メッシのSNSに中国語で誹謗中傷が書き込まれた。騒動を受けて中国サッカー協会は『レギュラー陣の9割を出場させる契約書にサインすること。それができなければ中国には呼ばない』と欧州の各クラブに通達しました。このオフには欧州選手権やコパ・アメリカが開催されます。どこも親善試合にレギュラーを出すリスクは取りたくない。それで脱・中国が加速したのです」 このエージェント幹部は、欧州クラブを呼ぶのに「皆さんが思っているほど大きな金額は必要ない」とも打ち明けた。 「クラブの規模にもよりますが、1試合あたりおよそ2~3億円プラス経費という感じです。ただし、レアル・マドリードやバルセロナ、プレミアリーグのトップレベルのクラブになると10億円規模の金額が必要となります。アメリカや中東のオイルマネーで潤っている国は5年などの長期契約を結びますが、さすがにそこまでの財力は日本にはない。それでも、スポンサーの獲得やパートナーシップ締結、クラブ会員の獲得などのうまみはある。だから彼らは日本にやってくるわけです。特にスペインのラ・リーガとドイツのブンデスリーガが熱心ですね」 6月上旬、来日中のラ・リーガの幹部は、筆者にこう話した。 「マジョルカやレアル・ソシエダが日本企業とスポンサー契約を結んでいることからもわかるように、我々ラ・リーガはアジア、なかでも日本でのマーケット拡大を目指しています。日本はビッグクラブだけではなく、金銭的に裕福ではない規模のクラブでも集客が可能で、ビジネスチャンスがあると感じます」 海外クラブも、対戦するJリーグのクラブも潤い、ファンは世界トップレベルの技量を間近で見ることができる。まさに三方良しと言えそうだが、いくつか懸念事項もあるという。 「1つは、来日するクラブが多すぎて“飽和”していく恐れがあるということ。このペースで各クラブが来日すると飽きられてしまう恐れがある。たくさん来ればいい、という単純な話ではないのです」(同前) 選手ファーストの観点からも、今の状況は決して好ましくない――とエージェントの幹部は続けた。 「過密日程を懸念する声が上がっています。来年からCL(チャンピオンズリーグ)のレギュレーションが変わりますから、一層その傾向は強くなる。今夏はユーロ(欧州選手権)が開催されるので、選手たちのオフは短くなっており、ケガのリスクも高まっています」 とはいえ、今後しばらく、オフシーズンを利用した欧州クラブの“日本巡業”は続く見込みだという。こうした背景を頭に入れて海外人気クラブとJクラブの試合を観るのも一興かもしれない。 取材・文:栗田シメイ(ノンフィクションライター)
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