ADHD治療薬の長期使用で「脳卒中」や「心筋梗塞」などの心血管疾患リスク上昇
スウェーデンのカロリンスカ研究所らの研究グループは、「ADHD治療薬の長期使用と心血管疾患リスク上昇の関連が認められた」と発表しました。この内容について、中路医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
研究グループが発表した内容とは?
編集部: スウェーデンのカロリンスカ研究所らの研究グループが発表した内容について教えてください。 中路先生: スウェーデンのカロリンスカ研究所らのグループは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬と心血管疾患(CVD)の関連性を調べる研究を実施しました。研究結果は学術誌「JAMA Psychiatry」に掲載されています。 研究グループは、2007年1月~2020年12月31日にスウェーデンでADHDの診断を受けた、もしくはADHD治療薬が処方された患者のうち、心血管疾患と診断された症例群1万388人と、心血管疾患と診断されなかった対照群5万1672人を対象に研究を実施しました。対象となった人の年齢中央値は、症例群と対照群ともに34.6歳でした。追跡期間中のADHD治療薬使用率については、症例群が83.9%、対照群が83.5%と同程度でした。処方された薬で多かったのは、「メチルフェニデート」「アトモキセチン」「リスデキサンフェタミン」でした。 研究の結果、ADHD治療薬の累積使用期間が0に対する調整後オッズ比は、累積使用期間が1年以下で0.99、1~2年で1.09、2~3年で1.15、3~5年で1.27、5年以上で1.23となり、ADHD治療薬の累積使用期間が長くなるほど心血管疾患リスクが高くなる傾向が明らかになりました。心血管疾患の種類別では、高血圧および動脈疾患でADHD治療薬の累積使用期間との関連が認められましが、不整脈、心不全、虚血性心疾患、血栓塞栓症、脳血管疾患に関しては統計学的に明らかな関連はみられなかったとのことです。 今回の結果を受けて、研究グループは「ADHD治療薬の長期使用に関しては、リスクとベネフィットを慎重に検討し、心血管疾患の徴候や症状を常にモニタリングすべきだ」と述べています。