「韓国ドラマの『ジャンルレス』が羨ましかった」注目ドラマ『ライオンの隠れ家』松本Pの挑戦
「寛大なベテラン」と「物怖じしない新人」の好相性
――物語の枠を決めたあと、脚本を作っていく際はどのような役割分担で進めたのですか。 松本P:最初はプロットから初稿に起こすのが徳尾さんで、そこに一戸さんが直しを入れ、徳尾さんに戻して、さらに一戸さんに戻すといった往復で、準備稿を進めました。でも、後半の6話以降は一戸さんも連ドラの作り方に慣れてきたので、最初に初稿にするのを一戸さんがやってみて、徳尾さんに渡して、そこからはスタートをどちらが始めるかは順番にしていきました。 ――連続ドラマを複数脚本家で書く「ライターズルーム」の手法にはいろいろなパターンがあると思うのですが、例えばNHK土曜ドラマ『3000万』では4人の脚本家さんが1話ずつ交代でメインライターを手掛けられています。 松本P:そうですね。同じくらいの経験値で組む場合はそれができるんですが、今回の場合は、全話に二人が携わったほうが、絶対良くなると思いました。経験に差があるのもありますが、それぞれの強みも異なるので。二人で全ての本打ちに出るので苦労は倍になるんですけどね(笑)。 ――ベテランと新人で組むのはやりにくい部分もあると思いますが、お二人の相性が良かったのでしょうか。 松本P:そうですね。徳尾さんは一戸さんに惜しみなく技術を共有し、成長のサポートをしてくださいましたし、一戸さんも脚本家として一緒に名前を並べるからにはと、物怖じせずに積極的に徳尾さんにアイデアをぶつけていました。結果的に、徳尾さんの話の展開のさせ方や構成を作る巧みさと、一戸さんの温かいヒューマンな登場人物の表現力、それぞれの良さが合わさった脚本になったと思います。 ――今後の見所を教えてください。 松本P:尾野真千子さん演じる愛生がストーリーの軸にからんでくることで、物語がより分厚くなります。また、サスペンスの要素は大きく転がっていきますが、根底にあるのはヒューマンドラマで、洸人と美路人とライオンの3人が大きな嵐に巻き込まれたことによって、どんな風に人間としての変化や成長を見せるのか、兄弟の思い、家族への思いがどう変わっていくのかを楽しんでもらいたいです。
田幸 和歌子(フリーランスライター)