FA人的補償で西武移籍の内海は元阪神・榎田の前例に倣えるか?
セからパへの移籍は難しいのか?
セからパへの移籍では同じく左腕の榎田が絶好の前例を作った。インサイドを攻めてカット、スライダーでバットの芯を外していくタイプのピッチング。内海もインサイドへのツーシームを武器にして、カット、スライダー、チェンジアップを操るコントロールピッチャー。技巧派という共通項があり、制球力でいえば榎田よりも内海のほうがある。 榎田は移籍して勝てた理由のひとつに「打線のバックアップがあり、責任回数まで踏ん張ればなんとかなる、という気持ちで投げられたことが大きかった」と語っていたが、内海の可能性はどうだろうか。 前出の里崎氏は「じゃあ榎田と同じように勝てるか、という議論はナンセンス。ものさしが違います。浅村が抜けて打線が今季とは違っています。打点王の抜けた穴は大きいでしょう。それに榎田には故障の不安はありませんでしたが、内海には1年を通じて万全の状態で投げられるのか、という問題があります。そこをクリアしないと予測はむずかしいでしょう」とシビアだ。 内海は2014年に9試合連続勝ち星から見放され肩を痛めるなどして7勝に終わると2015年も故障に苦しみ、わずか2勝と低迷。2016年は開幕からローテーに入って9勝と持ち直して復活の兆しを見せていたが、昨年は2勝7敗、今年は5勝5敗に終わっていて下降線にあることは事実。 さらに交流戦の結果を見れば明らかだが、セから打線の威力が増すパへの投手の移籍は本来厳しいとされている。今年、野上亮磨の人的補償で巨人から移籍した高木勇人は、先発ローテー入りを期待されたが、わずか8試合登板(先発3試合)、1勝2敗、防御率、8.69と期待を裏切っている。 里崎氏は言う。 「榎田はカットを覚えロッテという“カモ”を見つけました。内海が勝ち星を重ねるには、そういう“お得意様のチーム”を作る必要があるでしょう。交流戦ではセ、パの実力差がハッキリと出ていますが、じゃあ全球団が打つのかと言えばそうでもありません」 榎田は、今季対ロッテで5勝0敗。たまたまのローテーの巡り合わせだったが、味方打線の援護もあり、相性よく勝ち星を稼ぎ、それが自信につながった。内海も、万全のコンディションで開幕を迎えて、何かのきっかけをつかめば、榎田のようにブレイクを果たす可能性がないわけではない。 “柳の下に二匹目のどじょう”がいますか、どうか……いやリーグ連覇。ソフトバンクに阻止された日本シリーズ進出を果たすためのカギを握る重要な補強だ。