博多一風堂の海外展開、成功の鍵は?
クールジャパンが一風堂を支援する理由
日本の文化を海外に発信する官民ファンド「クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)」は8日、ラーメン店「博多一風堂」などを手掛ける「力の源ホールディングス」(福岡市)に対し、約7億円の出資と最大13億円の融資と、総計20億円規模の資金提供にて支援することを決定しました。昨年11月の設立から、今回が8件目の支援案件になりますが、飲食分野への投資は博多一風堂が初めての事例となります。 今回、クールジャパン機構が力の源ホールディングスに出資する目的として「日本食の魅力を発信する外食事業への出資」が挙げられています。数ある日本食の中でなぜラーメンが選ばれ、その中でなぜ博多一風堂が選ばれたのでしょうか。 ラーメンが日本食の魅力を伝える料理だと認められたことには、やはりラーメンの世界的規模でのブームが背景にあるでしょう。今やラーメンはアジアのみならずアメリカやヨーロッパ各地でも注目を集め、人気ラーメン店には数時間待ちの行列が出来ています。さらに日本からの出店はもとより、現地の人々が経営するラーメン店も増えて多様化してきました。また、海外から日本に来る観光客の多くは、日本で食べたい料理として寿司や天ぷらなどと同じくラーメンを挙げるようになってきました。 2008年のニューヨーク出店以来、精力的に海外出店を続けている一風堂は、これまでに47店舗の海外出店を重ねてきました。さらに今年1月にはクールジャパン事業の一環としてパリで開催された「パリ・ラーメンウィーク "Zuzutto"」でも中心的な存在としてイベントを牽引。12月にもニューヨークで創作ラーメンイベントを開催し、全日空の機内食としても一風堂のラーメンが採用されるなど、これまで積極的に海外へ向けて情報発信して来た姿勢も評価されたと言って良いでしょう。
一風堂は味千拉麺を超えられるか?
一風堂よりも早く世界に進出し、今や海外で650店舗以上を展開する「味千拉麺」は、そのうちの500店舗程が中国への出店になっています。これは創業者が台湾出身者であり、基本のラーメンの味は日本のままでありながらも、現地に合わせた味のラーメンも提供したり、さらに現地の食文化に沿った一品料理などを揃えるなど、メニューをローカライズしたことが成功の要因と言えるでしょう。 一風堂もこれまでの出店は中国や韓国などのアジアが中心で、欧米圏ではニューヨーク、シドニー、そして今年10月に欧州初出店したロンドンと、3都市5店舗に留まっていました。今後はクールジャパン機構の支援を受けることで、より精力的に欧州エリアへの出店を加速させて、2020年までには海外200店舗を目指します。 すでに成功を収めているニューヨーク店には、日本の一風堂には見られない「ウェイティングバー」が併設されていますが、これは食事の前にバーでお酒を飲みながら待ち合わせをしたりメニューを選んだりするニューヨーカーたちのライフスタイルを取り入れたもの。また、メニューも日本のようにラーメンだけではなく、一品料理やアルコールメニューを充実させています。特に日本酒や焼酎の品揃えは専門店顔負けのラインナップで、唐揚げやアサリの酒蒸しなどと共に日本酒を楽しむニューヨーカーの姿が多く見られます。さらにユニフォームはメンズブランド「Engineered Garments」とコラボレーションしたスタイリッシュなものを採用するなど、既存のラーメン店のイメージにとらわれない大胆なパッケージを構築してきました。